肝機能の検査結果と糖尿病との関係を日本人で調べた文献です.
この論文を選んだのは下記の理由です.
対象者は全員自衛官
1991~1994年に,健康診断を受診した4621名の全員が自衛官です.自衛隊であっても内勤の方はいるでしょうが,ほとんどは 素人の甘っちょろい運動ではなく,演習・訓練で体を動かしてきた人たちです.
対象者は全員中年男性
自衛隊には退職前に健康診断を行う制度があるようです.ですので,受診者の年齢は 48~59歳です. この年齢層ですと,まだ女性自衛官はいないので,全員男性です.
極端な肥満の人はいない
職業柄 極端な肥満の人は少ないはずです. 実際 対象者の平均BMIは 23~24とやや太めながら,全員中年男性ですからこれは当然でしょう.
肝炎ウイルス陽性の人は除外
肝機能との関係を調べるのですから,既に肝炎かもしれない人を除外してデータがとられるべきです. 肝機能と糖尿病との関係を調べた文献はあっても,特に海外では,健康診断制度そのものがない国もあります.この場合 全体平均が,少数の肝炎(かもしれない)人によって大きく振られてしまう可能性があります.
ただし,B型肝炎は全員検査しておりますが,C型肝炎の検査が開始されたのは1993年からなので,約半数の人は,C型肝炎抗体陽性かどうかは不明です.
肝臓リスクも調査
肝機能を見るのですから,喫煙・飲酒歴は当然調べています.自衛隊らしいなと思ったのは ,単に飲酒するかどうかだけでなく,飲酒する人には”Heavy Alcohol Use”かどうか,つまり『豪快な呑みっぷり』かどうかも尋ねています.
IFGとIGTとを区別している
空腹時血糖値と耐糖能試験から,WHOの判定基準にしたがって;
- IFG = Impaired Fasting Glucose 空腹時血糖障害
- IGT = Impaired Glucose Tolerance 耐糖能障害
を区別しています.
日本の文献では,正常/境界型/糖尿病 と3区分にすることが多いのですが,IFGとIGTとは予後が大きく異なる(IFGはIGTよりも正常者に近い)ので,こう区分して観察するのは妥当です.
以上の背景からして,この文献は 日本人の中年男性の均質集団における,肝機能と糖尿病との関係とをかなり純粋にとらえた貴重な報告です.
[3]に続く
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