SGLT2阻害薬は「やせ薬」か[2]

製薬会社の臨床試験データ

現在日本では 7社から6種類のSGLT2阻害薬が発売されています.
これらの薬の臨床試験で, 単剤長期単独投与結果を見ると,52週の連続投与で 被験者の平均体重減少は下記の通りでした.

どれもほとんど同じで.1年間で体重減少率は3~4%です. PhaseIII の試験結果なので,対象は実際の糖尿病患者,それもこの薬がターゲットとする肥満型患者が多いので平均体重は80kgくらいであったとすれば,実体重減少では,~3kgほどとなり,たしかに スーグラ,フォシーガもそれくらいの値です.毎日50gやせていくはずなのに,1年で3kg減量とは どうも計算が合いません.

実際の症例ではどうなのか

最初のSGLT2阻害薬は,日本では2014年4月に発売されました.当初は皮膚乾癬など,従来の糖尿病薬では考えられない副作用が相次いだため,普及のテンポは鈍いものでしたが,日本糖尿病学会が猛烈なキャンペーンを行ったためか 翌年からは全国の病院で多用されるようになり,その成果が2016年以降 糖尿病学会で多数発表されています.

2016年の第59回日本糖尿病学会の学術発表を見ると,324件もの報告が出ています.それらの報告から,SGLT2阻害薬を服用した患者(全 2401名)の体重変化を報告した結果をまとめたものが下記の図です.

横軸は服用期間,縦軸は 元の体重からの変化率です. 丸の大きさは,個々の報告での対象患者数です. 体重変化の加重平均をみると,最初の3か月で大きく(-4%)減っていますが,すぐに横ばいになり,52週(=1年)後にはむしろ少しリバウンドしているようにみえます.

最初の3か月の下落の勢いがそのまま1年間持続していたら,たしかに1年で20%近くの体重減となっていたでしょう. ここだけをみれば,前回の記事 で『毎日50gずつやせていけば,1年で18.5kgやせる計算』と符合しています.SGLT2阻害薬の服用は1年間継続しているのに,どうしてこうなってしまうのでしょうか? なぜ最初の3か月だけしか体重が減らないのでしょうか?

[3]に続く

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