2018年の Ahlqvist博士の報告を最初に読んだ時,これは糖尿病医学分野における重要な一里塚(MileStone)になるだろうと予感しました.
実際 今日 欧米では 『2型糖尿病は一つではない』という認識は定着しています.この観点での研究,特に今回紹介したRHAPSODYプロジェクトの結論は 欧州の国際機関によるものですから,いずれWHOの基準として採択されるでしょう.
ひるがえって日本を見ると,RHAPSODYプロジェクトが解析材料として用いた 英国のGoDARTS,オランダのDCSに相当する登録型データベースすら,まだ構築が始まったばかり(J-DREAMS)です. J-DREAMSに質の高いデータが蓄積され,今回紹介したRHAPSODYのような高度な解析ができるようになるまでには,少なくともあと10年はかかりそうな気がします.
もっとも欧州のIMIは,総額6,900億円以上という潤沢な基金で運営されていますが,J-DREAMS構築中の日本糖尿病学会は 人手も資金もまったく不足しているようです.厚労省は,ガン関係の研究には気前よく予算を出すのですが,糖尿病については『患者が生活習慣を改めればいいだけだ』という考えなので ほとんどカネは出しませんから.
また日本の研究陣の層も薄いです.この『2型糖尿病の病態別分類』をまともに研究しているのは,ぞるばの知る限りでは 福島県立医大の島袋教授のみです. Ahlqvist分類にせよ,RHAPSODY分類にせよ,どちらも欧州の白人の糖尿病患者のデータから導き出されたものです.これをそのまま日本人には適用できません. ですから,そもそインスリン分泌が桁違いに低い日本人糖尿病患者の分類に適した指標は存在するのか(たとえば IRI,TGなど)という段階から始めねばならないでしょう.
日本糖尿病学会は,食品交換表の延命などやっている場合ではないと思います.
MDHって何だ? 【完】
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