【この記事は 第66回 日本糖尿病学会年次学術集会を聴講した しらねのぞるばの 手元メモを基にした感想です. 聞きまちがい/見まちがいによる不正確な点があるかもしれませんが,ご容赦願います】
健康診断データを解析した一般口演セッション49の続きです.
1-49-5 TG/HDL-C比と2型糖尿病の発症との関連性;Panasonic cohort study
Panasonic株式会社は,従業員約94,000人の大企業です.
これだけ多数の社員が毎年定期健康診断を受けるのですから,そこで集まるデータは膨大です.しかも社員番号で追跡できますから,経時的に健康状態の変化を見ることが可能です. この大規模データを生かして,Panasonic Cohort Studyという研究が継続されています.
この口演もその一つで,TG(中性脂肪)/HDL比と,2型糖尿病発症リスクとの関係を調べたものです.
2008~2018年の社員120,613人の健康診断データから,この期間中に2型糖尿病を発症した人 6,080人のデータを解析したものです.
LDL,HDL,TG(中性脂肪),TG/HDL比の指標中,もっとも鋭敏に10年以内の糖尿病発症リスクを反映していたのは TG/HDL比であり,Cut-Off値は 2.1でした.
逆に もっとも感度が鈍かったのは,なんとLDLでした.この解析では,スタチンを服用していた人は除外しています. したがって人為的にLDLを低下させない場合,LDLは糖尿病発症リスクのあまりいい指標とはならないことを示しています.
なお,多くの企業で40歳未満の社員については,中性脂肪やコレステロールなどは,必ずしも義務化されていないので省略されることが多いのですが,このデータの平均年齢を見ると40歳台なので,Panasonicでは,年齢にかかわらずすべての項目について検査を行っているようです. なので,若年から中年までの健康指標の変化を追跡できる貴重なデータベースとなっています,
なお,本ブログでもこの記事で;
TG/HDL比は,インスリン抵抗性のよい指標となる(→したがって糖尿病発症リスクの評価に使える)ことを示しました.
それ以外にも TG/HDL比は,動脈硬化,心疾患死亡率と強く相関することが明らかになっています.
中性脂肪(TG)を低く,かつ HDLを高く保つことは,健康を守る秘訣であることを示しています.
[続く]
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