第64回日本糖尿病学会の感想[6] 05/22午後 高齢糖尿病患者には注意

学会Live配信最終日 05/22の午後は このシンポジウムを視聴しました.

シンポジウム 28: 高齢糖尿病患者に対する栄養管理と運動療法のススメ

全部で5本の講演がありました.

  • 【1】高齢者における運動療法の個別性
  • 【2】地域における運動療法の取り組み
  • 【3】合併症予防を考慮した高齢者の食事療法
  • 【4】高齢者のフレイルと糖尿病、食品摂取多様性の関係
  • 【5】高齢者糖尿病における多因子介入の重要性

【1】高齢者における運動療法の個別性

【1】の講演では Bunkyo Health Studyが紹介されていました.

文京区と提携して,主として同区内に在住する 65-84歳の高齢者1629名(平均年齢=73.1歳;男性 687名,女性 942名)を前向きに追跡する研究です.一般的な健康状態・健診データだけでなく,DNA解析・骨塩密度・動脈硬化・運動能力・筋量・筋力の程度を最初に測定しておいて,以後5年後,10年後まで追跡し,認知症・要介護状態に陥る要因を探ろうというものです.
現時点では 登録を完了した段階ですが,この種の観察研究としては 綿密な前向き研究ですので,成果に期待したいところです.

もっとも成果が出る頃には,たぶん 私には手遅れですw

【2】地域における運動療法の取り組み

【2】の講演は 高齢者の望ましい運動の在り方の解説でした. 高齢者は何も全員がアスリートやトップクラスのボディビルダーを目指す必要性はありません. それよりも適切な強度で多様な運動(レジスタンス運動・平衡[=バランス]運動・有酸素運動)を適宜組み合わせた マルチコンポーネント(=Multi-Component)運動が望ましいという,きわめて妥当な解説でした.(私見ですが,これらに加えて 体の柔軟性を保つ ストレッチ運動も加えるべきと思います)

なお,ウォーキングというと,特に筋トレ至上主義の人は『あんなものは運動ではない』とみなす人がいるようですが,歩行は何も下肢の筋肉だけでなく,大殿筋・中殿筋・脊柱起立筋・腹筋群まで効果が及ぶので,高齢者にとっては効率のいい運動であると説明されていました.

もちろん,どの運動であれ,必要量の蛋白質を適時に摂ることが必須であることは当然です.

【5】高齢者糖尿病における多因子介入の重要性

【5】の講演では,高齢糖尿患者の認知症を防ぐには.血糖値コントロールだけを見ていればそれでいいというものではなくて,『日常活動度』,『十分な栄養摂取』,そして『適切な社会参加』のどれが欠けてもいけないと強調していました.

更に血糖コントロールですが,高齢糖尿病患者においては血糖コントロール不良群よりもむしろ低血糖群の方がADL(日常活動度)低下リスクが大きくなると解説されていました. HbA1cだけを見ていいると,前者のHbA1cは8.6%,後者は 6.7%ですから,これはショッキングなことです. 数字だけで患者を判断してはいけないという典型ですね.


以上が 第64回日本糖尿病学会 年次学術集会の Live配信 3日間の感想です.
この後 感想レポートは一時中断して,6月7日から配信されるオンデマンドで,Live配信期間中に視聴できなかった シンポジウム・一般口演(症例報告)などの感想を述べる予定です.

[7]に続く

コメント

  1. 丸山正一 より:

    https://db.wasedachronicle.org/doctor/
    日本糖尿病学会の理事長を始め理事の方は製薬会社から謝礼金を年間500万円とかそれ以上受け取っています。
    利益相反しています。

  2. 丸山 正一 より:

    もう少し付け足します。私は30代の頃から痛風(発作)に苦しみましたが、数年前から糖質制限食を開始して痛風から離脱出来た72才です。
    糖質制限食が当たり前になると殆どの病気、不調が無くなり医療費が削減出来てしまうように思います。

    • しらねのぞるば より:

      この記事にも書きましたように,私も糖質制限食を開始して3年目には,糖尿病に関する指標は すべて改善しました.
      それ以外の検査諸数値も,この記事の通りです.

      あとはこれを維持していけばいいだけだと思っております.