前回の記事について,おそらく医師とお見受けする方から,
健常者の[血糖値 vs Insulin 図]についてLoop Patternが何種類かに分類されるという見解は,過去に報告例があるのか
という,ご質問をいただきました. 先生,ご質問 ありがとうございます.
ご質問にはメールでもお答えしましたが,図を含めてご説明した方がよいと存じますので,ご許可をえて 本記事でも述べます.
たぶん 既報はないと思います
まず,既報文献があるかという点ですが,私の調べた範囲では見当たりませんでした.
もちろん 系統的に文献検索したわけではないので,断言はできません.ただし,糖負荷試験後の血糖値の変動パターンについては;
経口ブドウ糖負荷試験時の連続血糖測定による2峰性血糖曲線の意義について
などの報告は いくつかあるようです. しかし,インスリン分泌パターンと比較としてLoop図化したものではありません.
個別症例を平均化したのでは
そこで,既報が見当たらない理由ですが,鹿児島大学 納先生もHP で述べておられるように,個人ごとに 非常に異なるパターンを呈していたとしても,それら全員のOGTTの平均データをとると;
こうなってしまいます. これを BG vs INS のLoop図にすると;
26人の,どの人とも一致しないパターンになります.似たような形はありますが,それはわずか2,3人です.納先生は こう評しておられます.
26例の個々人の息の詰まるようなすざましい変化に比べ、平均をとってしまうとこんなにも味気ない無意味なものになってしまうことが分っていただけると思います。
患者の立場での糖尿病臨床研究
その3:健常成人26人の5時間糖負荷試験の驚きの結果
納 光弘
したがいまして,文献に報告されるOGTTデータは多数のSubjectの平均化により,そもそも個人のVariationが消失しているため,結果として まるで異なるLoopパターンがあると一般に認識されていない原因ではないかと推測しております.
[12]に続く
コメント
自分自身のOGTT、及びFGMの動向を確認すると 不可解な点が沢山ありました。
納先生のデータを拝見しても 今一つピンと閃かない部分が多く、悪戦苦闘しておりましたが、
今回の インスリン分泌のなぜ?を拝見してから 謎が解けてきました。
Loop pattern として捉えると、自分自身のインスリン分泌を深く理解する事ができたのです。
3パターンありますが、私のループは多分 これだろう!と推測しております。推測ですが、、、
人間の身体は ブラックボックス まだまだ謎はありますけれど、
いつも楽しく、難しく 拝見しております。
ありがとうございます。
はい,本当に謎だらけですね.
今回 取り上げた納先生の糖負荷試験データだけでも,これだけのバリエーションがあります.しかも これって『正常人』のデータなのですから.
したがって,血圧,コレステロール,体温,…. どれをとっても,この世に二つと同じデータはないと思っています.