定説に（できるだけの根拠をもって）挑戦するのが このブログの使命と思っておりますが，今回の
【HbA1cは『過去2か月の平均血糖値』ではありません】[1] [2] [3] [4]
には，結構な反響があり，いくつかご質問もいただきました．ありがとうございます． ただ いずれも回答が難しいものばかりですので，正確な回答は後日の宿題とさせていただいて，現時点での感想のみ記します．
なお，ご質問は 第三者にもわかりやすくするために，原文に一部加筆していたり修正したりしておりますので，ご了解願います．
Q.1 自分の赤血球の寿命はどこかで測定してもらえるのか．
A.1 赤血球の寿命測定法は次の通りです． 自分の血液を少量取り出して標識試薬（NHS-ビオチン)でラベル化した後，体内に戻して，以後一定期間毎に採血して，残存しているラベル化赤血球の量を測定するという方法です．非常に手間と時間のかかる方法であり，研究機関なら可能ですが，病院ではできません．
Q.2 古い赤血球がたくさん壊されると，HbA1cが見かけ上 よくなるというが，それは急に運動を始めた場合もそうなのか？ スポーツジムに通い始めたら，翌月に急にHbA1cが下がった．過去2か月くらいの平均血糖値を反映しているにしては，変化が早すぎるのではないか．
A.2 その可能性はあります． もちろん運動によって 筋肉の血糖取り込みが増えた効果もあるでしょう． ただ急にというのがたかだか1か月くらいの期間であれば，過激な運動による溶血性貧血で赤血球の入れ替わりが急速に進んだ可能性もあると思います．
Q.3 HbA1cがあまり信用できないのなら，グリコアルブミン(GA)で見た方がいいのか．
A.3 GAとHbA1cとの比率は，ほぼ GA:HbA1c=3～3.3:1くらいが正常とされています(ただし，これも個人差があります)． ですので，HbA1cに疑問があれば，同時にGAも測定してもらい，その比率が大きく乖離していないか見ればいいでしょう．GAとHbA1cで大きな乖離がないのなら，「ほぼ」HbA1cに平均血糖値が反映されているとみてもいいでしょう．糖尿病ネットの『HbA1CとＧＡの乖離について』という記事に 詳しく解説されています．
Q.4 赤血球を若くする方法はあるか
A.4 赤血球の個々の寿命は先天的に(=遺伝的に)決まっている要素も大きいでしょうから，外部刺激だけで若くすることは難しいのではないでしょうか． 急に過激な運動などで一時的に変化するかもしれませんが，どこかで平衡に達すると思います． ただ 赤血球を『若く』する目的が 「HbA1cを低く出したいから」というのであれば本末転倒な気がします．むしろ血糖値を下げるよう努力する方が本筋だと思います．
Q.5 HbA1cが高いからというだけで，糖尿病の薬やインスリンを奨められているが，本当にそうしなければいけないのか．
A.5 『 この医師はHbA1cしか見ていないのではないか』と感じても，医師の方では 他の指標(肥満，コレステロール，血圧など）を総合的にみて判定しているかもしれませんから，疑問があれば 率直に尋ねるのがいいと思います． そこで患者からの質問をうるさがったり，なぜ投薬をすすめるのか，HbA1c以外にも理由があるのか，などを詳しく説明してくれないような医師なら代えた方がいいでしょうね．
Q.6 自分で血糖値を測定しているが，病院でHbA1cを測ってもらうと 思っていたよりもはるかに高い値が出てくる
A.6 SMBGで血糖値を頻繁に自己測定しているが，測定器の誤差を勘案しても，どうみてもHbA1cがおかしい，というのは 医師でも時々経験するようです．なので 最初からほぼすべての患者に GAとHbA1cの同時測定を行ってしまう病院もあります．
患者さんに血糖自己測定（SMBG）をしてもらって記入してくる数字とHbA1Cがどうも合わない。うそを書いているのではないかと思ってGAを測る。するとSMBGの結果が本当であったことがわかるということが、同時測定を始める前によくありました。
『グリコアルブミン検査の活用例』糖尿病ネット （＊）
那珂記念クリニック 遅野井健 院長
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自分の血糖値測定結果とHbA1cとが ひどくかけ離れているという場合には，GAも測定してもらうか，あるいはフリースタイルリブレなどで 継続的に血糖値を測定してみた方がいいと思います． 自覚していない高血糖の時間帯があるかもしれません．
余談ですが，現在の健康診断では空腹時血糖値とHbA1cだけをみていますが，それらはすべてやめて いっそ GA測定だけにした方が，よほど正確にスクリーニングできると思います．
これ以外にも ご意見・ご質問があれば 遠慮なくお寄せください． 医者ではないので責任は持てませんが，かならずお答えします．
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