レタトルチド 第3相試験通過

レタトルチドとは

GLP-1/GIP受容体作動薬であるチルゼパチド(商品名:マンジャロ)は,肥満型糖尿病に対して強力な血糖値/体重低下をもたらせる薬として 投与実績が伸びています.
日本での2025年度の販売実績は 1,310億円,前年度比 222.5% と倍増しました. 今後も更に伸びていくでしょう.

そしてこのチルゼパチドを更に強化したのが, GLP-1/GIP/グルカゴン受容体作動薬(トリプルアゴニスト)のレタトルチド Retatrutide です.

レタトルチドは,現在はまだ開発段階の新薬ですが,途中経過を見るだけでも,チルゼパチドを一回り強力にしたような効果を発揮しています.

脂肪がゴッソリと
怪しげなサプリの売り文句のようなタイトルですが,これはそうではありません.この記事で;GIP/GLP-1/グルカゴン受容体活性薬が開発中(イー・ライ・リリー; LY3437943 )と紹介しましたが,その臨床試験の結果報告が相次いでいます.…
レタトルチド~体重への効果
レタトルチドとは,GIP,GLP-1,そしてグルカゴンの3種のホルモンを絶妙に『ものまね』して,これら3つの受容体を活性化する薬です.あまりにもうまくまねているので,GIP,GLP-1,グルカゴンの受容体がすべて『すわ,うちのお客様がドドッ…
レタトルチド~HbA1cへの効果
イー・ライ・リリーが開発中の新薬 レタトルチド retatrutide(開発コード; LY3437943)の臨床試験が進行しています. Phase3まで進んでいるものも多く,特に肥満解消に目覚ましい効果が注目されています. 進行中の臨床試験…

そして,この記事で レタトルチドの今後の展望を予想しました.複数の臨床試験で 新薬開発の最終段階である第3相試験にまで進んでいることをまとめました.

レタトルチド~展望
3回にわたり,イー・ライ・リリーが開発中の新薬 レタトルチド retatrutide(開発コード; LY3437943)の現状をみてきました.レタトルチドは FDAの認可を得るべく,ただいま臨床試験中ですが,すでに Phase3まで進んでい…

第3相試験通過

上記の展望記事で紹介した,進行中の第3相臨床試験の内, NCT05929066 が最近(6月3日)第3相試験を完了した(Completed)と報告されました.

(C) Clinical Trials.gov

試験結果の最終報告は まだUploadされていませんが,開発元であるイーライ・リリー社(Eli Lilly)から,その一部が発表されています.

(C) Eli Lilly
(C) Eli Lilly

なんと 体重30%減ですよ,奥さん(←誰? (C) プーカプカ様)

じゃあ体重67kgのぞるばが,これをのめば 47kgになるのかというと,もちろんそんなことはなくて,このすさまじい減量数値をたたき出したのは 平均BMIが40,平均体重が112.7kgの人たちなのです. レタトルチド服用 80週で,体重が20~30kg減っていますが,それでも体重は 80kg以上(BMI ~30)なのですから,高度肥満が普通の肥満になったというだけです.

ただし この減量効果は,期待通り チルゼパチドよりは強力です. したがって認可されれば,たちまち 米国の肥満治療薬市場を席捲するでしょう.

どうしてこんなに減量できるのか

この記事にも書いたように;

第64回日本糖尿病学会の感想[23] 『グルカゴンの反乱』のその後-9
考えてみれば当然グルカゴンは,多くの糖尿病患者からみれば血糖値を上げる『悪役』でしょう.(C) キラーT細胞 さん前回の記事は,この悪役グルカゴンが作動しないように グルカゴン受容体アンタゴニストを開発して投薬すれば たしかに HbA1cは…

グルカゴンは,糖尿病患者にとっては 血糖値を上げる悪役ですが,本来の役目は 全身の代謝を活性化することなのです.血糖値が上がるのは,その代謝亢進の結果にすぎません. レタトルチドによって,あたかも とんでもない量のグルカゴンが体内に出現したようにみせかけて,必要以上に代謝を高め 人体の消費エネルギーを増加させる,だから痩せるという仕組みです. たとえて言えば,車を故意に空ぶかしして,燃費を悪くしているようなものです.

気になる副作用

レタトルチドの効果は,たしかに目覚ましいのですが,一方で 現時点では気になる情報も明らかになっています.
一つはこの記事にも書いた投与開始後の心拍数の増加です.
そしてもう一つは;

Retatrutide Side Effects

皮膚の感覚異常 Dysesthesia です.レタトルチド服用者の20%ほどが,「皮膚がピリピリするような」異常感覚を訴えました.

吐き気などの消化器関係の副作用であれば,他のGLP-1受容体作動薬でも珍しくないのですが,このような感覚異常は報告されていません.

とすれば,これは レタトルチドに特有,特に グルカゴン受容体を強く刺激したことにより発生した副作用の可能性があります(機序などは不明). 一過性のもので,レタトルチドの服用をやめれば消失していくのであれば さほど問題にはならないでしょうが,これまでになかった現象であり,今後注目すべきと思います.

  

  

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