[カバーイラスト 『秘密戦隊 ゴレンジャー』 (C) 東映ビデオ]
第68回 日本糖尿病学会年次学術集会で予定されている発表の抄録集を読んでいたら,『おや?』と思う報告がありました.

YIAとは.日本糖尿病学会が若手研究者(Young Investigator)を支援する奨励賞(Award)のことです.
メトホルミンを6ヶ月以上継続服用している2型糖尿病患者は,服用していない患者よりも血清中の 銅(Cu),鉄(Fe)イオンの濃度が低く,逆に亜鉛(Zn)濃度は高かった,という報告です.抄録だけではこれ以上の詳細は不明なので,発表を聴講するつもりです.
この記事に興味を抱いた原因は,この記事に書いた通り;
メトホルミンは,その分子構造から,馬蹄形に開いた電子雲のクッションを持っているため;

金属(銅,鉄,コバルト,ニッケル,クロム…etc.)イオンがメトホルミンに遭遇すると,2つのメトホルミンの分子と金属イオンとが,シャキーンと(音はしないでしょうが)合体するのです.

これらのメトホルミン-金属錯体は,多様な生化学活性を有しています.特に 亜鉛ーメトホルミン 錯体は,強力な殺菌作用を有すると報告されています.

ところで,メトホルミンの服用を続けていると,次第に腸壁にメトホルミンが蓄積されてきます.
それも血中濃度の30~300倍という高濃度で存在するようになるのです. ということは,メトホルミン服用者の腸壁には 当然 亜鉛ーメトホルミン 錯体もまた高濃度で存在しているでしょう.
これらを勘案すると,糖尿病でメトホルミン服用している人の腸内細菌構成は,服用していない人とはまるで異なるという,この報告とは符合するわけで;

ますますメトホルミンへの興味は尽きません.
なお,イメグリミンには 上図の分子構造の通り,環状構造なので金属イオンが飛び込む入口がないため,錯体を作ることはないと思われます.
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