MDHって何だ? では合併症は?

英国・オランダで,医療データベースに登録された 9,000人以上の2型糖尿病患者を分析したことろ,診断病名としては 『2型糖尿病』であっても,臨床的な特徴を見ると 5つのグループが混在していることがわかりました.

A new diabetes patient sub-classification: its application in RHAPSODY

この5つのグループは,それぞれに 異なる特徴を持っており,結果的には 治療経過も異なっていた こともわかりました.

ただし 糖尿病治療では,合併症の発生を防止することが最大の目的です. そこで,上記の患者を長期追跡して,その生存曲線(カプランマイヤー生存曲線 )を Cox回帰分析[*]して,グループによって合併症発生リスクが異なるのかどうかを調べました.

[*] 『Cox回帰分析』:下記の資料に「わかりやすい」解説があります.
【医学研究初心者のためのやっぱりわかりにくい統計道場】 弘前大学 畠山真吾 教授

結果はこの通りでした.

Li 2024 Fig.2を翻訳

この図では,MDH(高HDL 軽度糖尿病)の合併症リスクを1.0として,それに対する相対リスクの高さで表示しています. グラフが右にあるほど,MDHよりも合併症が発症しやすく,左にあれば,MDHよりも合併症が発症しにくいことを示します.目盛りは対数目盛です.

ですから,たとえば最下段の「末期腎疾患:ESRD = End-Stage Renal Disease」では,SIDD/MOD/MDの人の発症リスクは MDHよりも有意に低く,SIRDの人のみがMDHと同じくらいのリスクということになります.

ただし,これだけでは 各グループの相対的なリスク比を評価したことにはなりません. なぜなら SIDD/SIRD/MOD/MD/MDH 各グループに分類された人の平均年齢や男女比がそれぞれ異なるので 公平な比較になっていないからです.
そこで これらの交絡因子(平均年齢 及び 男女比の違い)を補正して,同じ条件に揃えて リスク比較した結果がこちらです.

Li 2024 Fig.2を翻訳

補正前に比べて,ハザード比の分布を示す横棒が おしなべて右に(つまりMDHより相対リスクが高くなる方向に)移動したことがわかります. この図から,MDHに比べると,他のグループは 心臓・腎臓系の合併症発症リスクが高いことがわかります.逆に言えばMDHは 他のグループに比べれば,相対的には 合併症を起こしにくいタイプなのです.

 

 

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