11β-HSD1阻害薬[9] Cushing病ではどうなのか

クッシング病は,日本では年間100人程度が発症する指定難病の一つで,発症機構・原因はさまざま[Cushing syndrome: Physiopathology, etiology and principles of therapy] です.したがって手術等で治療可能なものから治療法不明のものまであります.

ただほとんどの場合,コルチゾールの過剰分泌という症状を示すので,11β-HSD1阻害薬による治療が可能かを調べた報告があります.

クッシング症状 又は 慢性的にコルチゾール過剰症状があり,他の治療法(手術・投薬)でも症状が改善しなかった16人を対象にして,塩野義製薬の 11β-HSD1阻害薬 S-707106[化学構造非公開] を200mg1回/日(★)を24週間投与した試験です.

(★) ただし12週目で効果不十分な場合は 2回/日に増量

塩野義製薬の 11β-HSD1阻害薬:S-707106とは,INCB13739と同様に 2010年に糖尿病薬として 第2相試験(NCT01240759)を実施して血糖低下効果は確認されたものの,その後の進展がみられていなかった薬剤です.

試験の評価項目は,クッシング病の特徴の一つである 耐糖能の悪化が S-707106により軽減できるか,具体的には糖負荷試験において 試験中の血糖AUC(=曲線下面積)を25%以上少なくできるかどうかでした.

試験開始時の対象患者は16人でしたが,2人が途中で脱落しました. 残り14名中,12人は 途中から 200mg×2=400mg/日に増量.2人は最初から最後まで 200mg/日の投与となりました.

結果は,初期→24週後で,空腹時血糖値:106.6→105.6, HbA1c:6.23→6.15 と変わらず. 糖負荷試験中の血糖AUC:388→376と 2.66%の減少であり,目標の25%減少を達成できませんでした.

性別・年齢別・BMI別などでサブ解析を行っていますが,そもそも被験者数が少ないので,目立った差異は見いだせませんでした.

注目の ACTH(=クッシング病ではこの過剰分泌がコルチゾール過剰を引き起こしている)分泌ですが,これが副腎皮質ホルモンのややこしいところで,概日リズムにより,時刻により大きく変動します. したがって時間帯別に 測定してみましたが,やはり S-707106投与24週投与の効果はみられませんでした.

以上の結果から,11β-HSD1阻害薬はクッシング病治療薬としての有効性は得られませんでした.

[続く]

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