2022年 糖尿病治療は変われるのか[3]

今年の学会等

2019年に日本糖尿病学会が『糖尿病診療ガイドライン 2019』を発行してから,2年半が経ちました. このガイドラインでは

『糖尿病患者に 一律・機械的に画一の食事療法を押し付けるのではなく,一人一人の病態や嗜好に応じた 個別化された食事療法を行わねばならない』

という,まことに合理的な方針が打ち出されました.

不幸なことに この新方針は,従来の『食品交換表は理想的な栄養バランスであり,糖尿病の唯一の食事療法である.したがって,糖尿病患者に一律に適用すべきであり,例外は認めない』とは正反対のものです.

このため,全国の糖尿病治療医療機関では,従来とは正反対の新ガイドラインをどう実行していいものか 皆目見当がつかず,結果として従来通りの『食品交換表による食事療法』が,今 この瞬間も継続されているところがほとんどです.

いくら何でもこの状態をいつまでも放置しておくことはできないでしょう. そこで,本年の糖尿病治療,特に食事療法に関して何らかの影響を及ぼしそうな学会・イベントを見てみますと;

1月 日本病態栄養学会 年次学術集会

非常に重要で注目しております.この記事でも紹介した通り;

学会3日目の午前に開催される『コントラバシー1:食品交換表を栄養指導時に利用する是非』では,糖尿病患者の『唯一の正しい食事療法である食品交換表』が あろうことか,『今後栄養指導に使っていいものなのか』と議論の俎上にのせられるからです.

まことに罰当たりですが,これはキリスト教で『聖書を礼拝に使うのは正しいのか』と言っているようなものなのです.

このシンポジウムの成り行きが,今後の学会の方向を占うものになるでしょう.明確な結論が出せることを期待しておりますが,万一『食事療法の個別化も大事だが 食品交換表も重要』などと 玉虫色の結論を出すようであれば,今まで 各クリニックで行われてきた 糖尿病患者の食事療法・栄養指導は何も変わらないでしょう.

2月 第56回 糖尿病学の進歩

この講演会のおおまかなプログラムは既に発表されています.ただ,これらの件名をみる限りは,糖尿病の食事療法に関して 集中的な議論を行う予定はないようです.

2月 管理栄養士 国家試験

昨年の第35回国家試験では,患者の病態がどうであろうと,ただ教科書知識を機械的に適用していれば それでよしとする『マニュアル一辺倒』の考えでは,必ず間違える問題が出されました.
『高齢の患者に(飽和脂肪酸が50%の)バターをたっぷり摂らせなさい』が正答になるとは,かつての管理栄養士国家試験では考えられないことでした.
今年も このような『知識に偏っていて応用力のない』受験者を積極的に振り落とすような応用問題が出るかどうかが注目されます.

5月 第65回 日本糖尿病学会 年次学術集会

本年 もっとも注目されるイベントです.今後の食事療法の方針に関して 学会から何らかの意思表明があるとしたら,この学術集会しかありません. ただし 残念ながらまだ 開催内容の詳細は不明です.

なお,新しく認可されたイメグリミンの実臨床での投与症例の報告などが期待されますが,発表締め切りは 昨年の11月末だったので,まだ十分な数の実績データは集まっていないかもしれません.

6月 『糖尿病治療ガイド 2022-2023』発行

1年おきに改訂される,一般内科医向けの簡便な糖尿病治療マニュアルです.公式の発売日は6月1日ですが,その直前の日本糖尿病学会の会場で 先行発売されるのが通例です.
前回の 『2021-2022版』では,食事療法で『炭水化物比率は 40-60%』と,やや緩和して注目されました. ただし,これは医師向けの資料だけであって,患者向けの『糖尿病 治療ガイド 2020』では,相変わらず『炭水化物比率は 50-60%でなくてはならない』と書いてあります. つまり 医師向けと患者向けとで 推奨内容が異なるのです. この『二枚舌』は,今年 解消されるのでしょうか?

9月? 『糖尿病 診療ガイドライン 2022』発行?

これまで3年ごとに改訂されてきたので, 『糖尿病 診療ガイドライン 2019』 に続いて 発行されるかもしれません.
ただし必ず3年毎に改訂と決まっているわけではないので,本年は見送られるかもしれません.

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