インスリン抵抗性を考えてみました[4] クランプをHOMAで推測

インスリン抵抗性を正確に測定するには,まかり間違えば命掛けのクランプ試験しかない,というのが前回記事 でした.

しかし,この方法を実際の糖尿病患者の診断に使うわけにはいきません.
そこで 考え出されたのが HOMAです.

Homeostasis model assessment

HOMAとは

HOmeostasis Model Assessment(恒常性モデル評価)のことです.この図を思い出してください.

肝臓は人体を流れる血液に血糖を供給します.
膵臓は,血糖値に応答して,インスリンを分泌します.
そして 筋肉を始めとする組織はインスリンの介助により,血糖を取り込みます.また 図にはありませんが,脳も血中ブドウ糖を大量消費する臓器です.

糖の流れと,それを制御するインスリンとを非常に単純化すればこういうことなので,上記のそれぞれの臓器が,あたかも精密な電子部品であるかのように,その動作はすべて数式で表現できるものとします.これが HOMAの考えです.

数式化は こうします

膵臓の応答

たとえば 膵臓では 血糖が高くなれば(横軸),インスリン分泌は増えていく(縦軸)でしょう.しかし,無限にインスリンを分泌できるわけではありません.

脳の応答

脳は,血糖値がどうであろうと,常に一定のブドウ糖を取り込みます.

筋肉・臓器の応答

筋肉や各臓器では,血糖値が上がると 血液から糖をたくさん取り込もうとしますが,それはインスリン濃度の影響を受けます.インスリンが十分でないと,糖の取り込み速度は低下します.

腎臓の応答

腎臓は,血糖値が『閾値』(~180mg/dl)を越えると,急に尿糖の排出が増えます.

肝臓の応答

肝臓の応答は複雑です.血糖値が高い時(横軸:右へ)は,糖を取り込むし,血糖値が下がってくれば(横軸:左へ) グリコーゲン分解や糖新生で 糖を放出します. しかも,その時のインスリン値によって,この直線は上下します.こんなにきれいに直線関係とは限らないでしょうが,一応マウスなどの肝細胞実験データを基にしています.

血糖にかかわるすべての臓器について,このように 血糖とインスリンに対する応答をすべて数式で表したものが,HOMAなのでです.

では,ここから HOMA-Rはどうやって算出されているのでしょうか.

[5]に続く

コメント

  1. kz より:

    80歳の私が抱えている病気は、中期腎臓病、初期糖尿病、動脈硬化(高血圧)です
    1年前に判明して以来、薬を使わずに食事と運動で対処してきました
    糖質50g、タンパク質50g、塩分6gに制限し、カロリーは動物油とmctオイルで摂っています

    この効果のためか、シスタチンcの値が5ヶ月間で1.36から1.28に下がりました
    腎臓性能の長期低落現象を防げています
    空腹時血糖値は95くらい、食後1時間血糖値は140以下です

    この間、沢山の本や論文を読んできましたが、どうしても腑に落ちなかったのが、
    血管内皮に起こす炎症の原因でした

    最近、この疑問を埋めるピースが見つかりました
    腸内善玉菌です

    酪酸菌による酪酸は制御性T細胞を増殖させて、自己免疫の原因であるTh1細胞とTh2細胞のバランスを取り、慢性的な体内の炎症を鎮めます
    これにより血管内皮の炎症を防げるので、腎臓病、糖尿病、動脈硬化の悪化を防げるはずです

    アッカーマンシア菌は、腸内粘液(ムチン)を増やし、腸内内皮の細胞間タイトジャンクションを強化してリーキーガット現象を防ぎます
    これにより腸内のリポ多糖が血液に吸収されないので、炎症が防げます

    これらの菌を簡単に増やす方法は、フラクトオリゴ糖の摂取です

    腸内細菌に関する学術論文はネット上で読むことができ、その機序が理解できました
    (株)明治のホームページには、フラクトオリゴ糖を1.5g/日摂取したデータが出ています

    当分の間、フラクトオリゴ糖を多め(20g)に摂取し、半年ごとの血液検査で結果を確認します