リブレ【Pro】で見た糖尿病患者の血糖値~日本病態栄養学会報告より

フリースタイル リブレ【Pro】

最大2週間の連続血糖値(*)モニターである Abottのフリースタイル リブレが日本でも普及してきましたが,同じメーカーから提供されている フリースタイル リブレ【Pro】(以下 “Libre_Pro”と略記)は医療用です.保険適用が可能なので病院から貸し出されている方も多いでしょう.

(*)実際には血糖値ではなくて,細胞間質液のブドウ糖濃度を測定します.

本体の外観は通常のリブレとよく似ているのですが,Libre_Proの方は医療機器なので,測定誤差が小さいことが特徴です. 通常のリブレが 時々とんでもない数値を出すことがあるのに対して,Libre_Proの方は SMBGの測定数値に対して,平均的には10%程度の誤差であると謳われています.なお,Libre_ProにはSMBG機能はありません.

フリースタイル リブレPro[左]と家庭用リブレ[右]
(株) アボット ジャパン

今回の第23回日本病態栄養学会 年次学術集会でも このリブレProを装着してもらった症例報告が ありましたので,ご紹介します.

症例1[P-239]装着型24時間持続血糖測定器を用いての血糖値変化の研究 [公立学校共済組合関東中央病院]

対象者に 2週間 フリースタイル リブレProを装着してもらっています.この観察のの特徴的なところは,補食としてポテトチップス,野菜ジュース,スポーツドリンを摂るよう指示して,それらをいつ摂取したか記録するよう求めたことです.また被験者の生活・食事記録から,朝食欠食・運動・夜食・間食・ロカボの5項目の有無を分析しています.

この報告の特徴

  • 20~60歳台の健常人92名を対象にしている
  • 平均BMIは24±4.6[男性],22.4±0.4[女性].
  • BMI≧25の肥満者は92名中23名
  • 被験者は教職又は学校職員が大多数とみられるので,ライフスタイルが似ている集団.
  • フリースタイル リブレProを装着しているので,測定器誤差は小さい
  • 特定の補食(*1)を必ず摂るよう指示しており,それら補食と血糖値との関係を調べている
  • 被験者の生活・食事記録から,朝食欠食・運動・夜食・間食・ロカボの5項目の有無を分析している
  • 全期間(14日)の 血糖値変化パターンAGP(*2)と2時間単位での最高/最低血糖値を抽出した

(*1)ポテトチップス,野菜ジュース,スポーツドリンク. すべて特定メーカーの商品名を指定しています. (*2)AGP: Ambulatory Glucose Profile. リブレから得られた測定期間中の全血糖値データを統計的に解析して表示するツールです.詳細は下記解説書を参照.

西村理明『AGP活用 インスリン治療 高血糖 低血糖を見逃さない』
(C) 南山堂

結果

  1. 日別血糖値平均は 100.2±17.7[男性],93.7±5.7[女性]と健康.
  2. 2時間単位での最高血糖値の平均は 121±33.2[男性],113.2±2.8[女性]
  3. 2時間単位での最低血糖値の平均は 81.1±12.7[男性],78.6±7.8[女性]
  4. 糖尿病と診断されていない(=空腹時血糖値・HbA1cは正常)にもかかわらず,明らかに糖尿病型の人が5名存在していた.
  5. まったく同じもの(=指定した補食)を食べても,血糖値変化は人により大きく異なっていた.
  6. カレーは他の食事と主食量が同じでも食後血糖値上昇が大きく,かつ長時間継続することが複数の被験者で確認された.

感想

以下は,学会の報告内容ではなく,しらねのぞるばの感想です.

よくネット情報では(医師でも),『健康な人でも血糖値が200くらいになることはよくあるのだから気にしなくてもいい』などと書かれていることがありますが,この結果をみるとやはりそれは無責任でしょう.Libre_ProのAGP図も報告されていましたが,本当に健常な人なら AGPの75%Tileでも140mg/dlを超えることはほとんどないのです.

また 健常人であっても,やはりカレーは鬼門のようです.私の場合も下記記事に書いたように;

カレーを食べると,その糖質量の割には食後血糖値上昇が高く,かつなかなか下がらないというのは一般的な現象のようです. ただし,私の場合は,カレー[ライス]ではなく,カレー[豆腐]にすると,つまりカレー+炭水化物でなければ血糖値上昇はありませんでした[カレーに含まれていた糖質分だけの上昇のみ].

[3]に続く

コメント

  1. 西村 典彦 より:

    >本当に健常な人なら AGPの75%Tileでも140mg/dlを超えることはほとんどないのです.

    バーンスタイン医師も自著の「糖尿病の解決」で目標値を140以下にすべきであると言っています。
    HbA1cが比較的低値(6.9)で眼底出血痕が見つかっているので、私もそうすべきと思い実践しています。半分くらいはちょっと超えますけど。
    目標値7.0と主治医は口癖のように言いますが、私の現実を見てないのかなぁ。7.0で良いなら私は、治療する必要がないのですが。。。
    7.0は低血糖リスクのあるインスリン治療の場合であって、リスクのない場合の理想値でないのは明らかなのになぜそういう思考になるのか不思議です。

    >カレーを食べると,その糖質量の割には食後血糖値上昇が高く,かつなかなか下がらないというのは一般的な現象のようです

    私もライスなしで肉と野菜にカレー(レトルトのタイカレー:糖質10g以下の物)をかけて食べますが、カレーの糖質分の血糖上昇があるだけです。
    糖質とカレーを一緒に摂取すると相乗効果があるのでしょうか。
    先日カツカレーを普通に食べると200は超えましたけど、糖質量からすればそんなもんだと思います。その時も特にカレーだから高くなると言う事はなかったのですが、体質によるのでしょうか。ただ、運動中(スキー)に食べたので普段ならもっと上がった可能性は否定できません。

    • しらねのぞるば より:

      >目標値7.0と主治医は口癖のように言います

      HbA1cの値は単なる目安に過ぎないと思っています. この記事にも書いたように;

      https://shiranenozorba.com/2019_09_24_hba1c-is-not-average-bg4/

      AさんとBさんが 同じ HbA1c=7.0% だからといっても,二人の平均血糖値が同じとは限らないからです.HbA1cが7%でも,平均血糖値が200の人もいれば,130くらいの人もいて 実に大きな幅があるからです.

      > 私もライスなしで肉と野菜にカレー(レトルトのタイカレー:糖質10g以下の物)をかけて食べますが、カレーの糖質分の血糖上昇があるだけです。

      私もそうです.カレーだけ,又は カレーと非炭水化物(豆腐など)だけなら,食後血糖値はカレーに含まれていた糖質量に見合う分だけの上昇です.ところがカレーに炭水化物が加わると,合計糖質量から予想されるよりもはるかに高い血糖値上昇となります.しかも,なかなか下がらない,この現象は何度も確かめたので,再度記事にまとめてみます.

      なお,別件ですが,睡眠時呼吸障害と糖尿病との関係ですが,どちらが原因でどちらが結果なのか両説あるようで,ただいま文献を漁っております. 海外の文献では多くの場合 高度肥満者の症例なのでさらに話がややこしくなっています.

      • 西村 典彦 より:

        >海外の文献では多くの場合 高度肥満者の症例なので

        そうなんですよね。
        日本の文献でも睡眠時無呼吸となると基本的に肥満との関係を関連付けた内容になってしまいますし、そもそも無呼吸はインスリン抵抗性を示すと言う事を謳っているものはそこそこあるのですが、具体的な数値を掲げているものがなく、「インスリン抵抗性を示す」とされる研究の出どころはみんな同じ文献じゃないかと思われます。となると研究自体がほとんどない事になります。

        来週末には、またスキーに行きますが、前回の今年の初スキーから帰ってきて現在まではそれまでよりも就寝中のSpO2が下がりにくくなっています。そして少しずつ元に戻る傾向にあります。運動の効果、高山(1600~2000m)での低酸素の効果(高度順応)が持続し、だんだんと薄らいでいるように見えます。次回は高度が1000m程低いので低酸素の影響を受けないデータが取れるかもしれません。

  2. あじふらい より:

    自分もクリニックでつけてくれたのはリブレプロでした。
    ノーマルリブレと違って2週間終わるまでグラフがわかんないんですよね。
    あと、つけてるとこが痒くなります。

    カレーは本格派のやつだとスッと上がってスッキリ落ちてくれる気がします。
    やっすいのだと、ジワジワ感があるというかなんというか。
    でもカレーはやっすいのの方が自分は好きで、おでんの後にルーとか入れたりとか好きです。

    脂質の含み具合だろうとは思うんですけど、腹持ちの良いものは総じてそんな感じというか。
    そしてそれに慣れるとそれが美味と感じるようになって、なんだかそういうのが色んな根源に繋がる気はしてます。

    • しらねのぞるば より:

      >カレーは本格派のやつだとスッと上がってスッキリ落ちてくれる気がします。
      >やっすいのだと、ジワジワ感があるというかなんというか。

      そうなんです.私の例でも,玉ねぎと肉とスパイスだけ,つまり糖質が非常に少ない(玉ねぎの糖質だけ)本格カレーの場合は,血糖値はチョイと上がって速やかに下がります.しかし糖質の多い市販のカレールウ,あるいはそれにライスなどがつくと,食後血糖値は爆上がりで,しかも3時間以上高いままです. どうもカレースパイス+炭水化物が,肝臓の糖取り込み阻害と糖放出とを二重にブーストしていているように思います, これに脂質が加わると,その効果が長引くのではないかと. いやあだんだん面白くなってきました.

      • あじふらい より:

        自分が思うのは、「ごはんが進むものはごはんが必要」なんじゃないかな、と。
        カレーなんてめっちゃごはん進むわけで。
        おかずに対してご飯が足りてない、もしくはごはんに対しておかずが多すぎる。
        これによっておかずとごはんの組み合わせに本来必要なインスリンが分泌されないであったり、インスリンの動きが阻害されてるんじゃないかなーとか思ったりしてます(`・ω・´)
        (ご飯食べまくれば解決とかそういうことじゃないです)

        • しらねのぞるば より:

          昔の食事は,塩分の多い味噌汁や漬物とご飯だったりするわけですが,そういう場合はどうだったのでしょうね.

    • 西村 典彦 より:

      あじふらい様、

      >つけてるとこが痒くなります。

      私も8ヶ月を過ぎたころからかぶれるようになりました。1年以上経った今もいたるところがあざのようになっています。
      粘着剤によるアレルギー反応と思われます。リブレ使用者で結構多いようです。精度もさることながらこちらも改善してもらいたいです。

      私は自費で自分で装着しているので、アプリケーターから取りはずしてリブレの粘着剤をはがして、再度アプリケーターに向きを間違えないように再セットし、センサーを装着した後、
      (1)医療用防水フィルムを用意する
      (2)磁気治療器用ドーナツ型両面テープ(コリコラン用)を(1)に貼ってリブレより一回り大きく丸く切る
      (3) (1)+(2)を作って両面テープ側をアプリケーターにセットした状態のリブレの針を貫通させて貼る

      の順で張り替えたものを使用しています。作業はちょっと面倒(慣れれば5分くらい)ですが、これにしてからトラブルなしです。

      この方法をブログにアップされていた方がいらっしゃいましたが、現在閉鎖されているようです。病院での装着だとこんなことはできないでしょうし、言葉では説明しにくいですね(汗)

      もうちょっと簡単にできないかと思い、防水フィルムを皮膚に直接貼った上からリブレをガチャンとやってみたのですが、リブレのガイド針はフィルムを貫通できませんでした。中心に小さな穴をあけておけばよいのですが、そこを狙って装着するのが結構難しいです。

      もう一つは、リブレの粘着テープを残したまま、(両面テープを使わずに)その上に防水フィルムを直接貼ったものを装着しましたが、リブレの粘着剤は防水シートを貫通するようでかぶれてしまいました。

      医療用に使用する粘着剤はアクリル系、シリコン系などがあるようですが、アクリル系が最もかぶれにくいようです。

      絆創膏かぶれについて以下が詳しいです。
      http://www.numazu-hospital.shizuoka.jp/tokozure/img/2311.pdf