2020年 糖尿病イベント案内[1]

日本病態栄養学会

1月24日(金)~26日(日) 京都国際会館で,第23回 日本病態栄養学会 年次学術集会が開催されます.

日本病態栄養学会とは,1998年に設立された,主に管理栄養士と病態栄養専門医が加入している学会です.日本の医学教育では,医師の卵には栄養学を教えていません.であるにもかかわらず,栄養士法 には;

管理栄養士は、傷病者に対する療養のため必要な栄養の指導を行うに当たつては、主治の医師の指導を受けなければならない

(栄養士法 第5条の5)

と規定されています. 栄養学をほとんど知らない医師が,栄養学を学んできた管理栄養士を指導することになっているのです.
なぜこうなったかと言えば,

  • 食事療法も治療法の一つである.
  • 医師法により,治療行為は 医師のみが行える
  • したがって 食事療法も医師だけが行える

という三段論法です.

しかし,実際には糖尿病に限らず,高脂血症・高血圧症など,食事が大きく影響する病気は多いので,医師の栄養学の常識程度の知識(それすら怪しいが)だけでは 対応できません.
一方,管理栄養士は主として大学の栄養科・家政学科の出身であり,医師・薬剤師・看護師のように医学専門知識の教育は受けていません.医学基礎知識の講義はありますが,特に管理栄養士として実社会に出てからは,最新の医学情報でUpdateする機会はありません.

この両者のギャップを埋めたいというのが,この学会の設立趣旨です.

私は2012年以来,この学会には野次馬参加しておりますが,皮肉ではなく糖尿病患者には得るものが多い機会となっています. 特に糖尿病の食事療法については,日本で初めてまともに糖質制限食をとりあげた学会です(2012年 第15回年次学術集会).まだ糖質制限食が異端扱いされており,糖尿病学会では『糖質制限食』という単語すらタブーだったこの頃に,糖質制限食を真正面から議論するディベートを行おうと決断した,中西靖子会長に敬意を払います.

今回の学会の見どころは,この記事に紹介した通りです.

学会の見聞情報は 追って記事にしたいと存じます.

[2]に続く

コメント

  1. 西村 典彦 より:

    あけまして
     おめでとうございます。

    本年も「暴言」よろしくお願いいたします。

    令和二年 正月

    *******************

    >主治の医師の指導を受けなければならない。

    医師を頂点とするヒエラルキーは、医療の弊害になっているように思えます。対等な立場での分業が必要ではないでしょうか。
    アメリカでは管理栄養士の立場は医師と対等と聞いたことがあります。

    なぜ医学部では栄養学を教えないのか不思議ですが、もし、管理栄養士と分業と言う考えであれば、もう少し管理栄養士の地位を上げるべきではないでしょうか。
    「地位が低い=簡単な資格」と思いきや、栄養士の資格を取得した上に実務経験も必要(免除には4年制の管理栄養士養成施設を卒業)で私が今から取得するにはハードルが高すぎる(と言うより無理)な内容です。

    糖尿病は、一に食事、二に運動なのですから、もっと栄養学について医師が自ら学ぶべきだと思います。例えば、私の食事内容(スーパー糖質制限)について主治医とは話にもなりません。話をすれば、ただ否定されるのみだと思われます。

    運動についても医師から最初に確認されたのは通勤で8000歩程歩いていると答えただけで、これを一応、運動とみなしたようで、ことさら指導されたこともないですが、食事も運動も二の次的な治療になってしまっているように思います。
    まぁ、言われたところでやらない(できない)患者が大半なのかもしれんせんが。
    しかし、そこを何とか考えるのがプロの仕事だと思うのですが、こんな治療なら医学部出なくてもできるよと思ってしまいます。大きな声では言えませんがw

    私事ですが、highbloodglucoseさんのブログにもコメントしましたが、中枢性睡眠時無呼吸ではないかと思われる夜間の低酸素状態(SpO2:70%前後)が毎晩、高頻度で観察されています。無呼吸がインスリン抵抗性を増悪する(どっちが先か?)と言う研究も多数あり、就寝中のSpO2を収集中です。今年は、これと糖尿病の関係がテーマになりそうです。
    まだ、受診していないので何とも言えないので近いうちにどこかを受診しようと思います。

    • しらねのぞるば より:

      今年もよろしくお願い申し上げます.

      >本年も「暴言」よろしく
      気合が足りないと思ったら,容赦なくご指摘ください.

      >アメリカでは管理栄養士の立場は医師と対等
      米国の登録栄養士(Registered dietitian)は,患者の栄養指導に関しては,医師よりも権限が大きいのだそうです.米国に出張で行った時に,相手先の自宅を訪問したら,奥様が現役のRegistered dietitianだそうで,詳しく説明してくれました. 「日本では栄養学を学んだことがない医師が食事療法を指示している」と話したら,のけぞってました.「それで,裁判起こされたらどうするつもり?」と.

      >もう少し管理栄養士の地位を上げる
      医療に関する権限は,1ミリたりとも手放さない医師側も問題ですが,管理栄養士の側にも問題があると思っています. 日本の栄養学の先生や管理栄養士で,国際的な栄養学会誌に査読を受けた論文を英語で投稿できる人はほとんどいないと思います. 医師から権限を奪い取るだけの実力と実績がないのでは,いくら騒いでも現状のままでしょう.