肝機能指標と糖尿病[6]~ぞるば個人の例~

(C) イラストKID さん

ここまで 自衛官の方の退官直前 健康診断のデータを見てきた通り,健康診断の血液検査で肝臓にかかわる項目は,耐糖能が悪いほど 悪化(=大きな数値)になります. また,それらがすべて基準範囲内にあり,警告マークがつかなかったとしても AST/ALT比が小さいのは,やはり耐糖能低下のサインであることがわかりました.

私の例では

産業医が『ぞるばさん,あんたこのままだと糖尿病だよ』とコワい顔をして告げた時から直近までのデータを整理してみました.
私の肝機能の変化及び 血糖値・HbA1cの変化グラフです.

空腹時血糖値やHbA1cは,糖質制限食開始後速やかに低下した(*)のですが,ただ起床時の血糖値が高い「暁効果」が完全に解消したのは3~4年後でした.

(*)ただし 平均値は下がりましたが,最初の1~2年くらいは,データのバラツキ(標準偏差)は大きかったです. 標準偏差も含めて安定したのは5年目以降です.

こちらは 私の肝機能の変化です.

ALT値が なかなかAST値を下回りませんでしたが,糖質制限 4年目でようやく AST > ALTとなり,現在に至っています. AST/ALT比のグラフです.

結局 すべてが安定してきたのは ,糖質制限食開始後4~5年ということになります.

このあたりの変化は,糖尿病発症時点の状態によって,また年齢によって 大きく違うのでしょう.私は比較的軽度の時点で自分が糖尿病と気づいたのですが,それでも回復には 結構な長期間を要しました.「いつまでたっても改善しない」と短気を起こさずに,じっくりと待つことも重要かと思います.

もっとも,今でこそ こんなしたり顔で解説しておりますが,血糖値が安定していなかった頃は,とてもこれほど客観的にデータを眺める余裕などありませんでした.毎日の血糖値測定の数字を見て『一喜一憂』していたというのが実情です.治療に取り組んだら,性急に結果を求めるのは精神的にもよくないという教訓でした.

[7]に続く

コメント

  1. 西村 典彦 より:

    私が糖質制限食にした時は、すでにAST/ALT比は21/44(0.47)なので、回復には相当な時間がかかりそうです。
    10年かけて悪くなったものは10年かけて治すしかないようです。焦らず、10年計画で行きましょう。

    来月で、糖質制限2年ですが、(朝<昼<夜)だった耐糖能(悪い<良い)のばらつきは(朝≦昼≦夜)になって朝晩の差が少なくなってきています。これも回復のひとつなのでしょうか。

    私の場合はインスリンの分泌遅延(第1相がない?)が主因なので2時間ほどかけて食事をすれば、血糖値は上がらないのは分かっているのですが、平素はそうもいかず。。。
    もう少しで定年なので、それからは毎日、ゆっくりと優雅に食事を楽しみたいものです。

    因みに、ぞるば様のデータを拝見しますと血糖値の割にHbA1cが低めと思いますが、食後ピーク後に急激に下がるタイプなのでしょうか。
    私も生涯で最大のHbA1cは6.9なのですが、既に眼底出血痕が見つかっています(糖質制限で現在は消失)。
    HbA1cの割には症状が進行しているのは、食後ピーク後に低血糖を起こしていた(と思われる)のでHbA1cが低くめに出た可能性が大きいです。当時は、いつもの遅い夕食後はそのままリビングで寝てしまって、起こされても起き上がれなかったりしましたが、血糖値との関係など全く考えていませんでした。

    • しらねのぞるば より:

      この記事の『糖がつきやすい人』の項にも書いたように,

      https://shiranenozorba.com/2019_09_24_hba1c-is-not-average-bg4/

      「血糖値が同じなら 必ず糖化率も同じ」とは限らず,個人差も大きいようです.
      私が最悪のライフスタイルだったころでも,HbA1cは4.5(JDS;現在のNGSTでは4.8)という年もありました. このHbA1cの低さゆえに 自分は糖尿病とは無縁だと思いこんでしまった面はあります.

      また 「HbA1c = 5.5の人は,HbA1c = 5.0の人よりも必ず平均血糖値が高い」というのも間違いであることは,この記事に書いた通りです.

      https://shiranenozorba.com/2019_09_20_hba1c-is-not-average-bg2/

      >朝晩の差が少なくなってきています

      私の場合も糖質制限食継続期間が長くなるにつれて,一日の血糖値変動幅( Max – min)が次第に小さくなっていきました.

      https://shiranenozorba.com/2019_03_12_change-profile/

      最初は140 もあった変動幅が現在では 50以下になってきています.

      なお,このシリーズの企画を思いついたのは,11月5日の西村様のコメントに記載のデータからでした.この後の記事で紹介させていただきますので,ご了承願います.

  2. highbloodglucose より:

    一喜一憂しているブログ主が来ましたよ(笑)

    肝機能指標と糖尿病の関連、興味深く拝見しました。
    わたしは糖尿病発症前の検査データというのがないのですが、
    HbA1c 15%、随時血糖値754mg/dlという数値を叩き出した時点からの肝機能データを書き出してみます。
    AST、ALT、AST/ALT比、γ-GTPの順です。

    2017.6 15, 12, 1.25, 23(泌尿器科クリニック)
    2017.6 11, 10, 1.10, 19(市立病院)

    これは1日違いの検査データです。
    下は翌日、市立病院に緊急入院したときのデータです。
    たった1日でもAST/ALT比がかなり違っていますが、
    これは元々の数値が低いために少しの誤差で比率が大きく変わってしまうからでしょうか。

    2017.12 14, 12, 1.17, 10(市立病院)
    2018.2 14, 12, 1.17, 11(内科クリニック)
    2018.5 16, 16, 1.00, 12(内科クリニック)

    2018.7半ばより、緩い糖質制限開始

    2018.8 23, 42, 0.55, 16(内科クリニック)
    なぜかこのとき急にALTが上昇、AST/ALT比がすごく悪化しました。

    2018.11 20, 12, 1.67, 11(内科クリニック)
    2019.2 19, 16, 1.19, 11(内科クリニック)
    2019.5 17, 14, 1.21, 10(総合病院)
    2019.6 28, 22, 1.27, 12(総合病院)
    このときもいつもより少し数値が上昇していましたが、比は悪化していませんでした。
    2019.8 15, 13, 1.15, 8(総合病院)
    2019.9 14, 9, 1.56, 10(総合病院)

    こうして見ると、短い期間でAST, ALTはかなりばらつく印象があります。
    γ-GTPは比較的安定しているようですが。
    これはわたしだけの現象でしょうか?

    わたしの場合は糖尿病と肝機能指標は無関係だったのか、
    あるいは本当は糖尿病を発症していたのに何年も放置していたから、
    肝機能指標との相関が失われてしまったのか。
    それにしても、毎晩ビールをロング缶3本飲んでいたわりには、
    肝機能指標が悪くなかったのが自分でも不思議です。
    脂質関係も入院時のデータで
    HDL-c 76, LDL-c 124, L/H 1.63, TG 111という、特に問題なさそうな結果でした。

    こんなデータを出したら、話がややこしくなっちゃいますかね〜?(汗)

    • しらねのぞるば より:

      > 一喜一憂しているブログ主

      最初にこのタイトルを見た時は自分のことかとドキッとしました.

      > 短い期間でAST, ALTはかなりばらつく

      ASTは 測定検体に少しでも溶血があると大きく出ます.ALTも溶血で大きくでることはあるようですが,完全溶血でもない限り影響は小さいようです.

      ASTが急に変わったというご質問は非常に多かったので,このあとの記事でとりあげたいと思います.

      なお,西村様と同様に,個々の症例は 読者の関心が高く,急にアクセスが増えました,スマホの方はコメント欄を見落としやすいようですので,このあとの記事にて highbloodglucose 様の例も紹介させてください.

      == こりや記事の連投になりそうだわ ===

      • highbloodglucose より:

        ふと思ったのですが、重度の糖尿病でケトン体が増加しているような状況では、脂質代謝が亢進しているために脂肪肝ではなくなるのでしょうか?
        わたしの場合、体重が最高に増加していた時期(BMI 24程度の時期)に脂肪肝だったかもしれませんが、その後、おそらく糖尿病悪化のせいで2年くらいかけて体重が落ち、入院時にはBMI 18程度にまでになっていました。
        このことが肝機能指標に影響した可能性はあるでしょうか。
        ちなみに、肝エコーはしていませんので、実際に肝臓がどうなっているのかは不明です。

        • しらねのぞるば より:

          BMIが24から18ですか! うーん(天をにらむ) たしかに体内の脂質はごっそり落ちたでしょうね. ただその頃の肝機能指標をみないと 何ともいえないです.
          今 highbloodglucoseさんの データをグラフ化していますが,時に現れる妙なピークを除けば,極めて優秀な値(特にGPTが低い)なので 少なくとも現在は脂肪肝はあったとしてもわずかでは?

          > 肝エコーはしていません.
          肝臓専門医のところに 右腹を押さえて『イタタッ! これ,胆石じゃないでしょうか』と訴えて ついでに診てもらうというのはどうでしょうか.脂肪肝は よほどひどくない限り,エコーで見るのが一番確実ですから.

          今 19万8千円の ポケット超音波エコーを買おうかどうか 真剣に考えています.

  3. 西村 典彦 より:

    >この後の記事で紹介させていただきますので,ご了承願います.

    わざわざ、ご紹介いただくこと、誠に恐縮です。

    ふとしたことから、脂肪肝が糖尿病のリスクなら、肝機能指標を見てみようと思いつき、グラフにしてみたところ、ASTとALTが糖質制限後にゴールデンクロスっぽくなっているのに気づきました。正常だったころの値がどうだったかは知る由もないですが、現在、正常な妻の値を見ると明らかにAST>ALTだった事から、「もしかして。。。」と思った次第です。
    ただ、私は糖尿病発症リスク、および回復の指標としても「見える化」したかったのですが、回復の方は今のところよくわからないと言う状態です。

    それにしても私の偶然の思いつきをあっという間にここまでまとめていただき、感謝しております。どうも私は、いろいろ思いついてもそれを表現するのが下手なようです。

    • しらねのぞるば より:

      ただいま 記事を投稿しました. 今年の2月に ALT,ASTが突然上下している(しかし AST/ALT比は飛び跳ねていない)のは,検査業者の 前処理ミスではないかな,と疑っています.