日本糖尿病学会の食事療法ガイドライン改訂はどうなった[5完]

どっちが正しいの?

現時点では日本糖尿病学会が推奨する適正カロリーとは,同学会が2016年に発行した『糖尿病診療ガイドライン 2016』の;

p.40の記載が『適正』とされています.

一方 厚労省は 『日本人の食事摂取基準(2020年版)』を既に公開しており;

糖尿病患者だろうが健常者だろうが,同じような年齢・体格・ライフスタイルであれば,1日の総消費カロリーも同じであるとして,これを全国の医療関係者に周知徹底しようと研修会 を開始しました.

しかし,糖尿病学会の推奨に従うと,デスクワーク主体の40歳 男性は 1日に1900kcal以上摂れば「過剰」であるのに,厚労省の基準に従うと,これは ほとんど運動しない,つまり『寝たきり』の人ですら,カロリー不足となってしまいます[前回記事 参照]

多少の差異ならともかく,ほぼ正反対といってよい この状況は放置しておけるものではないでしょう. とりわけ,厚労省の推奨は DLW法による実測値を元にしているのですから ,訂正すべきは 日本糖尿病学会のガイドラインなのです.

では,いつまでに? 期限は?

日本糖尿病学会は2004年に『診療ガイドライン』第1版を刊行し,その後 律儀に3年毎に改訂版を発行してきました.

  • 科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン(2004.5)
  • 科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン 改訂第2版(2007.6)
  • 科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン 2010(2010.9)
  • 科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン 2013(2013.5.25)
  • 糖尿病診療ガイドライン 2016(2016.5.23)

『3年毎というのは,別に 法律で決まっているわけではないのだから,今回は遅れて来年になってもいいではないか』と言われそうですが,そうはいきません.

管理栄養士の国家試験が迫っています

管理栄養士の国家試験は,ここ数年は 『3月の第1日曜日』に行われています.すなわち次の第33回国家試験は 2020年3月1日です.

(C) 中央法規

中学校の期末試験ではないのですから,国家試験ともなれば,その準備は入念に行われます. 出題者を秘密厳守で選定し,出題案をとりまとめ,委員会により実際に出題する問題を選定,さらに 1問につき複数の識者が解答してみる. 以上をすべて非公開で行わねばなりません. 問題と模範解答の原稿が確定しても,これまた極秘で印刷に回し,ゲラ刷りをごく限られた関係者だけで校正し,入念に初校→再校→…. 校了 などとやるわけで,非常に時間と手間がかかります. 『精一杯やったが,間に合わなかった』 では済まされないので,試験日は来年3月1日であっても,十分余裕を見て 既に準備は始まっていると思います.

ところが,管理栄養士国家試験の午後には必ず出題される『臨床栄養学』の問題で,『日本人の健常者・疾病者の標準的な消費カロリー』について,2つの参考資料で数値が違っている,それも大きく違うことは問題になります. 『厚労省の基準で考えると正解なのに,糖尿病学会のガイドラインでは誤答になる』という事態が生ずるからです.

9月になれば

(C)NBC Universal Japan

9月になりました. 糖尿病学会にはもう時間がありません. たしか仙台で伺ったときには『夏頃には』と言っていましたよね? 政宗公もしっかり聞いていたはずです.

伊達正宗 公

【完】

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