インスリン感受性だって数字で評価したい[その1]

数字で評価しないと 糖尿病の傾向はわかりません

なので,これまでの記事では,

GVIで 血糖値の乱高下度合を数字で評価する方法

ミニ糖負荷試験で 耐糖能を数字で評価する方法

を提案してきました. 実際私はこの2つの方法で HbA1cなどからは判断できない中長期の自分の傾向を監視しています.

それなら インスリン感受性も数値化できないか

日本人の糖尿病は,欧米人の典型的な糖尿病とは異なる病型があると何度も述べてきました. 別にこれは私が発見したわけではなく,日本の医学界でも昔からそういう認識でした.

すなわち欧米,特に白人(コーカソイド)の糖尿病は,肥満によりインスリン抵抗性が発生し,これに打ち勝つために膵臓がインスリン分泌を増やすとそれがまたインスリン抵抗性を助長し….という悪循環で,日本人からみれば信じられないほどの肥満と,これまた信じられないほどの大量のインスリン分泌量でありながら,高血糖状態に陥っている,というものです.その実例は以前の記事 の「肥満だが血糖値正常な米国人の糖負荷試験データ」の図でも明らかです. この例では米国人の空腹時インスリン分泌量が,日本人の糖負荷試験中の最大インスリン分泌量よりも多い場合すらあります.

一方 日本人の糖尿病では,肥満でもない,それどころか痩せている方なのに,血糖値だけが上がってしまうパターンがあります. 1970年代頃までは,この方が日本人の糖尿病の主流でした.だからこそ,当時の医者はスルホニルウレア(SU)剤で,インスリン分泌を補ってやればいいのだと考えていたようです(糖尿病の薬はSU剤とインスリンしかなかった,という事情もあります).

ところが1980年代以降は,日本人でも欧米型のように,肥満とインスリン抵抗性が顕著な糖尿病も増えてきており,だからこそ,日本糖尿病学会は,食の欧米化=高脂質食=肥満=糖尿病という,きわめて荒っぽい,しらねのぞるばも真っ青な暴論をふりかざしてきたわけです.

ただし,じゃあ 日本人の肥満型糖尿病は,欧米人のそれとまったく同じなのかというと,実はそこにも疑問を感じます.これも 以前の記事 にも書きましたように,多くの米国・北欧の白人と一緒に仕事をしていた経験から,間近に彼らを見ると,BMIという単純に身長と体重から算出した1つの数値ではひとくくりにできない差を感じます.つまり同じ BMI=30の白人と,BMI=30の日本人はまったく別物だと思います. わかりやすい例では,相撲の栃ノ心は身長191cm,体重 170kgで,BMI=47ですが,いかに稽古で鍛えてもBMI=47の日本人はあんな筋肉の塊にはなれません. ましてスポーツをしていない日本人なら BMI=47では,日常の動作にも支障をきたすでしょう.

(C)kimkimkaoru さん

原点が違えば 経路も違うのではないか

以前の記事で,日本人の糖尿病は,欧米人に比べて 非常に低いインスリン分泌能と,非常に高いインスリン感受性を持つ状態[日本人の原点;下図]から始まって,

そこから肥満によりインスリン抵抗性が発生していくのが[欧米型糖尿病],一方 肥満を伴わず,ただインスリン分泌/感受性が低下していくのが[痩せ型糖尿病]ではないかと書きました.

そこで,この図が正しいとすれば,日本人の肥満型糖尿病はも,欧米人のそれとは似てはいても同じではないと思われます.もちろん,痩せたままで糖尿病となる左上に向かうコースならなおさらです. なぜなら,この右上にせよ左上にせよ,日本人の糖尿病は,インスリン感受性が失われていく過程ではないかと思えるからです. もともと日本人が ごく微量のインスリンだけで済んでいたのは,インスリン感受性が高いからであり,その感受性が減弱した際に,インスリン分泌増加できない人が左上に,一応分泌を増やして対抗できる人が右上にいくのではないかという考えです.

皆様からお送りいただいた糖負荷試験の生データを見るにつけ,欧米人のデータとはあまりに違うそのインスリンの量の少なさから,これはインスリン感受性も数値で評価する必要があると感じました.

インスリン感受性だって数字で評価したい[その2] に続く

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