この記事でとりあげる図は,以前の記事 でも紹介した 1960年代の米国人の糖負荷試験データを掲載した米国の論文からです.このデータを使う理由は;
共通点
- 現在と異なり,当時の平均的米国人は,現在の平均的日本人と同様の体格であった.
- 当時の米国人と現在の日本人とは,ライフスタイルが偶然にも似通っている.
- もちろん当時の米国人にも現在の日本人にも一定割合の肥満者はいるが,その割合も似ている.
相違点
- 日本人と米国人では人種に由来する遺伝子の差はあるはず.
- 当時の米国の糖負荷試験は,体重(kg)×1.75g/kg のブドウ糖を用いており,現在のように一律 75gではなかった.
本当は,現在の日本人での 痩せ型/肥満型 でデータ対比させたいところなのですが,日本人だけを対象にしてここまできれいにデータが揃った論文はみあたりませんでした. ただし,結論から言えば,このデータは現在の日本人の状況を理解するのに非常に参考になります.
なお,この論文では, 『非肥満』とは 当時の標準体重×1.15を越えない人のことです. 当時は,BMI21-22くらいをの標準体重としていました から,BMI=25を越えない人となり,現在の日本の定義とほぼ同じです. また『肥満者』とは1.15を越える体重の人ですが,この試験の参加者の肥満度は平均肥満度が 39-60%だったので,BMIに換算すると BMI=30~35となり,現在の『高度肥満』に該当する人です.
更に耐糖能を『正常』『軽度糖尿病』『中度糖尿病』と3段階に分けていますが,その基準は下記の通りで,現在よりはやや厳しい判定です.
非肥満型と肥満型とでは 最初から違う
まず 非肥満/肥満者で,糖尿病ではない正常人の糖負荷試験結果です.
一見して気づくのは,やはり米国人の怒涛のようなインスリン分泌量です.肥満者だけでなく,非肥満者でも日本人ではあまりみられない量です.血糖値のグラフだけを見れば,肥満/非肥満はほぼ同じですが,肥満者は非肥満者の2倍以上のインスリンで血糖値を抑えこんでいることがわかります.
なお,上にも書いたように,当時の耐糖能試験は,体重× 1,75gのブドウ糖,つまり,非肥満者と肥満者とでは.後者の方が圧倒的に大量のブドウ糖を飲んでいたのですから,同じブドウ糖量ならば,さらに差は開いたはずです.
軽度糖尿病での比較
『軽度な糖尿病』の米国人のデータです.やはり血糖値のグラフだけを見ると,よく似ていますが,非肥満者はインスリン分泌量を増やして,血糖値上昇に対抗していることがわかります.一方肥満者はむしろインスリン分泌が正常者より減って,その分血糖値が上昇したことがわかります.
中度糖尿病での比較
肥満者も非肥満者も,もはやあまり差がなくなって,血糖値/インスリン共に同じようなグラフです.また両者とも,軽度糖尿病の人に比べて,インスリン分泌量が半分ほどに減弱したことがわかります.さらにインスリンの分泌ピークも大きく後ろにずれています.
このデータを基準として,次回は 日本人のデータと比較します.
[データ解析03] に続く
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