患者一人当たりの糖尿病治療に関わる医療費の多い県と少ない県とがあるという前回の記事 では,保険診療レセプトの『件数』データを比較してみました. ただこの『件数』は,薬なら1錠,注射薬なら 1キット,透析は1回を一件と数えるので,治療の中身がわかりにくいです.
薬が多いか少ないか
そこで,各県の糖尿病内服薬の錠剤数だけを比較してみました. 患者一人あたり,一年間に処方された錠剤の総数です.
これを見ると,やはり 秋田・高知・宮崎などの高齢化県や,千葉・神奈川・東京などの首都圏が多いようです.しかし同じ高齢化県でも島根県(高齢化率:33.6% 日本3位),山口県(同:33.4% 日本4位)は少なく,和歌山県(同:32.2% 日本7位)のように非常に少ない県もあります. また都市部でも愛知県・大阪府は首都圏ほど多くありません.
どんな薬が多いのか
そこで,投与されている薬の種類別に相対割合をみると;
どの県でも,ビグアナイドとDPP-4阻害剤が圧倒的に多いことがわかります.これに,α-グルコシダーゼ阻害剤,SU剤が続いており,日本全国でこの順番は変わらない[★]ようです.
ただしビグアナイドはジェネリックを含め ほぼ100%がメトホルミンですが,DPP-4阻害剤の方は,配合剤も含めて10種類ほどもあるので,単剤としては,日本でもっとも多く処方されているのはメトホルミンです.
[★]このデータは2016年4月~2017年3月のデータなので,現在ではおそらくSGLT2阻害剤が(学会が熱心に推奨しているので)もっと増えていると思われます.
メトホルミンとDPP-4阻害剤
メトホルミンとDPP-4阻害剤,それぞれについて,一人当たり投与錠剤数の多い県,TOP 10は以下の通りです.
これを見ると,10県中6県が共通しており,メトホルミンの多い県はDPP-4阻害剤も多く,したがって投薬数合計も多くなっている理由がわかります.
同じことは,これらの薬の少ない下位の10県を見ると,やはり10県中6県が共通しています.
つまり,たくさん薬を出す県と,あまり薬を出さない県とがあることは事実のようです.しかし,多用される薬の種類という点では,むしろ全国均一に近いです. つまり質ではなく,量の問題です.住んでいる都道府県によって,どうしてこのような地域差が発生しているのでしょうか.
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