最初に宣言しておきます.
今回の記事は難解です.また そうなった理由も明らかです.
ミトコンドリアというものは複雑なのに,それを生兵法で理解しようとしているぞるばの能力不足が原因です.したがって以下の記載もどこまで正確なのかは保証の限りでありません.
ミトコンドリアの機能
ミトコンドリアは『細胞内のエンジン』とも言われますが,その機能は実に多岐にわたっています.その全容は,この記事でご紹介した解説書をご覧ください.
今回のイメグリミンの作用機序との関連に限定しますと,ミトコンドリアでは;
- 解糖系で生じた炭素数3のピルビン酸から 更に炭素1つが引き抜かれた炭素数2のアシル基(実際にはチオアセチルCoAのアシル基部分;CoA=補酵素A★)を,上図の通り クエン酸回路(TCA)により,水とCO2にまで完全に燃焼分解し,その発生エネルギーを原動力にして 水素輸送体であるNADH2+やFADH2を放出する.
- クエン酸回路から送り込まれたNADH2+やFADH2を 複合体I,II,III,IVが受け取り,H+をミトコンドリアの外膜-内膜間(膜間腔)に放出して,内膜の両側にH+の大きな濃度勾配を作る
- このH+の濃度勾配によるエネルギー差を利用して,ADPをATPに変換する
★ 『補酵素A』の『A』は,中森明菜の『少女A』と同様に,何種類もある補酵素に先頭からA.B.C…と命名したのだと思っていました.実際は A=Acetylだそうです.
したがって,これらを全体としてみれば結局 炭素数3のピルビン酸を,水と炭酸ガスに分解(燃焼)して,そのエネルギーを ADP→ATPの変換エネルギーに転換していることになります.
複合体は2系統
なお,ミトコンドリアの内膜に埋め込まれている,複合体 I~IVですが;
電子伝達系という名前は,まるで電子(e-)を リレーのバトンのように次々と渡していくからです.
この名称からみて,私は複合体 I→IVの順番に 段階的にポテンシャルを蓄えていって,最後にその反発力で ADPをATPに転換するのだろうと思っていましたが,
そうではなくて,実際には クエン酸回路から送り込まれてくるNADH2+を受け取るのは 複合体Iであり,FADH2だけは 複合体 IIが受取るのだということです.つまり 複合体の入力系統は2つあるのです.ただし,どちらも その後は複合体 III→IVと電子伝達されるところは共通しています.
この『複合体の入力は2系統』というところが,イメグリミンの機序を理解するにあたってのポイントです.
上記のFADH2という還元体は;
クエン酸回路で,コハク酸→フマル酸というステップのみで生成されます.
一方 NADH2+は,クエン酸回路のそれ以外のステップで生成されます.
Bozec博士がこの文献で推定しているイメグリミンの作用機序を理解するには,以上の予備知識が必要でした.
[5]に続く
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