ここまでの文献探索で,久山町研究でも,南原市研究でも,中国人のデータからでも,
- ALTが正常範囲内であっても,高くなるほど糖尿病発症リスクは高まる
- GGTは,カットオフ値(境界値)がはっきりしないが,やはり高くなるほど発症リスクが高まる
- ASTは,それ自体は糖尿病発症リスクとは相関していない
ALTが肝臓にもっとも多く含まれる酵素であるのに対して,ASTは全身に広くみられ,GGTはその中間ですから,この結果は納得できるでしょう.
ではALTの具体的な境界線はどのあたりなのでしょうか?
はっきりしない
現在健康診断や人間ドックなどで定められている『ALTの基準値』は,あくまでも明確な脂肪肝・肝炎の存在を示すマーカーとしてであって,糖尿病の観点から線を引いたものではありません.しかし ここまで引用した各論文,およびその他の欧米文献などを見ても,具体的な『ALTの警戒ライン』は不明瞭です.
肝臓基準値に限りませんが,多数の人を調べた結果 算出された『正常基準値』とは,あくまでも『平均値』にすぎません.
日本人男性の足の平均サイズは25.5cmですが,だからといって,すべての日本人男性の足のサイズが25.5cmではないように,多数の平均値は 『私の値』ではないのです.
逆説的に言えば,
『平均値とは 誰にもあてはまらない値である』
しかし これは考えてみれば当然で,ひとりひとり違うのだろうと推測されます. それを多くの人の平均値で出してしまうから,『ここからは危険ライン』という境界線が ひどくぼやけた幅広いものになってしまうのでしょう.
したがって,ぞるば個人の意見ですが,この肝機能指標データの判定はこうすべきだと思います.
おそらくほとんどの人は,人生でベストの代謝状態だったのは 17~18歳頃でしょう. したがってその頃の数値と変わっていないか,あるいはわずかに上昇した程度,それがその人の間違いのない『安全ライン』なのでしょう.
ただし 残念ながらほとんどの人は そこまで若い頃のデータは保存していいないと思いますが,せめて 若くてバリバリ健康だったころのデータをできるだけ遡って調べ,それを基準にしていくのがよいと思います
[13]に続く
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