Kahnの双曲線
インスリン感受性と,糖負荷に対して 膵臓β細胞が分泌する初期応答の間には,双曲線関係があるという論文が出されています.
Kahn SE, The Importance of β-Cell Failure in the Development and Progression of Type 2 Diabetes
この論文に掲載された下の図は日本の医学書にもよく引用されています.横軸のインスリン感受性が高いほど,糖負荷試験で急に大量のブドウ糖が血管に流れ込んできても,ごく少量のインスリンを分泌するだけで済みますが;
肥満などによりインスリン抵抗性が高まると,膵臓はより大量のインスリンを出さねばなりません;
しかし,膵臓の頑張りにも限度がありますから,どこかで耐え切れなくなって,もはや血糖値を抑え込めるほどのインスリンが出せなくなると,ついに糖尿病に至るというものです.
欧米の糖尿病病理学では,糖尿病=肥満=インスリン抵抗性 と一直線で考えるのでこうなります. もちろんこれは 白人の糖尿病については,まったくこの通りです.
痩せ型の糖尿病
しかし,最近 欧米の学者も,どうもそれだけでは説明できない,『痩せ型糖尿病』があることに気づいています.
Lean diabetes mellitus: An emerging entity in the era of obesity
痩せ型でインスリン抵抗性がほとんどないような状態,つまり従来の考えでは普通なら糖尿病に至らないような段階であっても,インスリン分泌能が低下していくタイプです.
しかし,この論文では痩せ型糖尿病の存在は指摘したものの,どうしてこんなことが起こり得るのか,まるで分らないと白旗を上げています.白人の肥満型糖尿病の考えでは説明できないからです.
しかし,ここに日本人の糖尿病を考える大きなヒントがあると思っています.
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