ぞるばは,2型糖尿病(と思っています)なので,1型糖尿病については まったくの無知でした.
ところが2024年の第67回日本糖尿病学会で 1型糖尿病の人の体験談をうかがって ,1型糖尿病の人は実によく勉強していることに驚きました. 実際 子供の頃に発症した1型糖尿病を克服するために 医師になったという人までおられました.2型とは気合が違います.
今回 緩徐進行1型糖尿病を勉強するために 文献を集めてみましたが,PubMedを見ても緩徐進行1型糖尿病の文献は年間100件ほどであり,2型糖尿病の年間3,000~4,000件に比べると はるかに情報が少ないことが分かりました.やはり 患者の数が少ない(*)ので,信頼性の高いデータを得るのが困難なのでしょう.
(*) 『患者の数が少ない』 しかし,単に 2型糖尿病と誤診されているだけで,実際はもっと多いのではないかとも言われています.
そんな中で,興味深い文献を読んでみました.

インスリン治療を受けていない糖尿病患者 282人を以下のようなグループ分けをして,平均107か月 経過観察しました.

ここで,GAD抗体などは この記事 で述べたように,1型糖尿病かどうかの判定に用いられている自己免疫抗体です.
GAD抗体が陽性であった人は,更に [10 U/ml以上か] [10 U/ml未満か]で2グループに分けています. グループ3,4はGAD抗体は陰性だったが,他の抗体に陽性であった人です.そして比較のためにグループ5も作り,これら抗体にまったく反応を示さなかった人で,つまりは2型糖尿病とみられる人です.
この人たちを経過観察するにあたり,年に1回糖負荷試験(OGTT;ただしブドウ糖100g)を受けてもらいました. 100gとは 通常の糖負荷試験の75gブドウ糖より多いですが,高い糖負荷をかけて インスリン分泌能力の限界を知るためでしょう. そして糖負荷試験中,0.30,60…分と30分毎に120分まで 血中C-ペプチド量を測定し,その合計総量(ΣCPR)が 5 ng/mlに満たない人を「インスリン依存状態である」と判定しました.
下図は,各グループで,インスリン依存状態になった人の割合を時系列でまとめたものです.

グループ1(GAD抗体 高値)の人は,150ヶ月までに ほとんどの人が インスリン依存状態になりました. 一方でグループ2(GAD抗体 低値)の人は,150ヶ月までは4割程度でした.
以上は グループ毎の平均を見ているのですが,では 個々の人でみるとどうなのでしょうか. 上述の糖負荷試験時の C-ペプチド総量(ΣCPR)のデータを,各人ごと,およびグループ平均でみたものが下図です.

左図がGAD抗体値が高いグループ1,右図がGAD抗体値が低いグループ2です. 各〇と細い黒線は個人ごとの経過,赤い太線はグループ全体の平均値,そして緑の線は95%信頼限界を表しています.どちらのグループ内にも個人差はあります.グループ1でもインスリン分泌能が長期間維持できている人もいれば,グループ2であっても速やかに失わる人もいます.しかしながら 全体の平均をみれば,やはりGAD抗体が高値であった場合は C-ペプチドは, つまり自前のインスリンは相対的に速く失われていくようです.
ところで,ここまでで GAD抗体値が高い/低いかを10 U/mlを境に二分しましたが,では その分布はどうだったのでしょうか.それは下図の通りでした.

縦軸目盛りが10を底とする対数目盛であることに留意してください. これから明らかなように,GAD抗体高値とはいっても,10 U/mlを少し超える程度の人から,数万 u/mlの人まで含まれています.平均すれば 数100 u/mlくらいでしょうか.対象人数が少ないので,この論文の結論以上のことは言えませんが,大まかにはGAD値が 将来の分泌能枯渇時期を左右しているようです.
緩徐進行1型糖尿病【完】

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