1型らしくない
糖尿病には 1型,2型,そして妊娠糖尿病とその他の糖尿病に分類されるというのが標準的な考えです.
1型糖尿病は,生活習慣や肥満などとはまったく無関係に,ある日突然膵臓のβ細胞が自分自身の免疫システムによって攻撃され,インスリン分泌機能を失うというものです. 『何年何月何日の何時頃』と時刻まで特定できるほど突然発症することすらあります(劇症1型糖尿病). 1型糖尿病は,多くの場合 発症年齢が若いので(ほとんどは30代以前),昔は小児糖尿病と呼んでいました.
これに対して2型糖尿病がいつ発症したのかとなると,本人はもちろん医師ですら決定できません.長い期間をかけて膵臓の機能が徐々に低下し,たまたま健康診断などで血糖値が高いことを指摘される場合がほとんどなので,実際にはいつ発症していたのか 誰にもわかりません.このように発症までに長い期間があるので,ほとんどの場合は成人以降,たいていは中年期に発症する人が多いです.
しかし何事にも例外はあり,高齢になってから1型糖尿病を発症したり,まだ小学生なのに2型糖尿病になる子もいます.
自己免疫(Autoimmune)疾患
このように発症年齢だけでは1型,2型は区別できませんが,ただし1型糖尿病のほとんどが自己免疫疾患(=自分の免疫システムが自分自身を攻撃してしまう)であることから,1型は抗体反応を調べることにより確定診断できます. 具体的には,血液中に GAD(グルタミン酸脱炭酸酵素)抗体,ICA(膵島細胞)抗体,IA-2(Insulinoma-associated antigen)抗体.ZnT8(亜鉛輸送体8)抗体などに対抗する抗体反応が見られれば(*),自己免疫反応が起こっており,したがって1型糖尿病と断定できます.2型糖尿病ではこれらの抗体反応は陰性だからです.さらに内因性インスリン分泌能の指標である空腹時C-ペプチドが,著しく低い,又は急速に低下していくことも1型糖尿病の特徴です.
(*)通常は GAD抗体反応だけで判定されます.これだけで約70%の判定精度です.4つの抗体反応をすべて調べれば90%近い精度です.なお,これらの抗体に陽性反応を示すからといって,これらが1型糖尿病の原因物質というわけではありません. あくまでも免疫系の応答が正常でないことを反映しているだけです.また劇症1型糖尿病では抗体反応が陰性のことが多いです. この場合は自己免疫以外の原因で膵島機能が破綻したものと考えられています.
ところが,血糖値はたしかに高く,したがって糖尿病であることは確実なのだが,(1)インスリン分泌は枯渇していない.(2)それでいてGAD抗体には陽性反応を示すというパターンがあります. つまり『1型らしくない1型糖尿病』です.これが緩徐進行1型糖尿病です.
SPIDDMとLADA/LADY
緩徐進行1型糖尿病は,日本と欧米とでとらえ方が異なるようです.
日本では緩徐進行1型糖尿病 SPIDDM(Slowly Progressive Insulin-Dependent Diabetes Mellitus)とは,即座にはインスリン治療を必要としないが,いずれかの時点で 上記の膵島関連自己抗体が陽性である人をすべてそう呼んでいます.
一方海外では,同じくゆっくりと進行する1型糖尿病であっても,おおむね30代以降の人を「成人潜在性自己免疫性糖尿病」LADA(Latent Autoimmune Diabetes in Adults),それより若くて診断された人を「若年発症潜在性自己免疫性糖尿病」LADY(Latent Autoimmune Diabetes in Youth)と二つに区別しています. この理由は 単に年齢の差だけではなく,若年発症=LADYは進行が早く抗体反応が強い,対して LADAは 抗体反応が穏やかで進行が更に緩やかだから,という理由です.
なので,日本のSPIDDMと海外の LADA/LADYとは同じものを指しており,いずれにぜよ緩徐進行1型糖尿病は,1型と2型の中間的病態を示します.
この文献では;

両者の特徴を わかりやすくまとめています.

[続く]

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