脂肪がゴッソリと

怪しげなサプリの売り文句のようなタイトルですが,これはそうではありません.

この記事で;

GIP/GLP-1/グルカゴン受容体活性薬が開発中(イー・ライ・リリー; LY3437943 )と紹介しましたが,その臨床試験の結果報告が相次いでいます.

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レタトルチド;retatrutide』とは 上記開発コードLY3437943につけられた 一般薬名です.このレタトルチドを18-75歳の2型糖尿病患者(HbA1c:7.0~10.5%,BMI:25~50(!))に 36週間 投与した結果が報告されています.

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投与後36週目での体脂肪減少率は,レタトルチドの投与量(R= 0.5, 4, 8, 12mg)に依存してきれいに減少していることがわかります.

比較対象のデュラグルチド(商品名:トルリシティ)は週1回注射のGLP-1受容体作動薬(GLP-1RA)で,この記事にもまとめたように;

他のGLP-1RAと異なり,高分子量タイプなので,食欲抑制効果が弱く 体重減少効果はないとされています.

それにしても この強力な脂肪減少効果は,動物実験でも確認されたことが人間でも そのまま発揮されることを示しています.

レタトルチドの臨床試験は,下の通り 現在多数が実施中ですが;

NCT Number開始日付Phase試験概要
NCT058820452023/5/303肥満かつ心疾患患者に対するレタトルチドの効果(Placebo対比)
NCT059290662023/7/103肥満(過体重)で膝痛・変形性膝関節症患者へのレタトルチドの効果(Placebo対比)
NCT059290792023/7/113肥満(過体重)で2型糖尿病患者へのレタトルチドの効果(Placebo対比)
NCT059361512023/7/202肥満(過体重)で慢性腎症(+2型糖尿病)患者へのレタトルチドの効果(Placebo対比)
NCT059313672023/8/13肥満(過体重)で膝痛・変形性膝関節症患者へのレタトルチド 1回/週投与の効果(Placebo対比)
NCT063135282024/3/201レタトルチドのエネルギー消費・代謝・食欲への効果(Placebo対比)
NCT063833902024/4/303レタトルチドの,BMI27以上で重度心疾患発症抑制・腎症悪化防止効果(Placebo対比)
NCT066623832024/11/13肥満者でのレタトルチドとチルゼパチドの比較

肥満だけでなく,糖尿病,心疾患,慢性腎症,変形性膝関節炎(*)などへの効果も調べられています.

(*)変形性膝関節炎への効果:肥満・体重減量に効果があれば,膝関節への負荷も軽減されるからです.

Phase3にまで進んでいるものも多く,少なくとも短期の致命的な副作用はなさそうです.動物実験では,レタトルチドは 現在日本でも普及しているチルゼパチド(商品名:『マンジャロ』)よりも強力なので ,上表の最後の通り,チルゼパチドとの1対1の直接比較も開始されています.

欧米白人では,肥満=糖尿病=心疾患死 とほぼ同義語なので,レタトルチドが実用化されれば,欧米ではメタボ万能薬として席捲するかもしれません.

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