糖尿病学会 感想9 相性

【この記事は 第68回 日本糖尿病学会年次学術集会のレポートではなく,講演を聴講した ぞるばの感想です】

前回記事の補足です.

FAMILIAR試験とは,

食事および運動療法に加えジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP-4)阻害薬を服用しても血糖コントロール不十分な 2 型糖尿病患者を対象に、DPP-4 阻害薬単剤療法とイメグリミン追加投与の有効性と安全性を評価する。

(C) jRCT 臨床研究等提出・公開システム

ことを目的として,国内21の医療機関が協力して行っている臨床試験です. 試験計画では 最長104週(2年間)にわたり,DPP-4阻害薬に対するイメグリミン追加投与の効果を評価する予定です.その中間報告として,24週目までの途中経過が報告されています.

Kaku 2025

DPP-阻害薬に加えて イメグリミンを追加で投与(1,000mg×2/日)した人は.追加投与しなかった人に比べて,24週目でHbA1cが 平均約1%低下することが見出されたのですが,興味深いことに 65歳未満の人と65歳以上の人とで比較すると,かなり明瞭な差がみられました.

Kaku 2025 Suppl.

それでは,年齢の高低以外でも,効果の差が見られたのでしょうか. 上記報告の追加情報資料(Supplement)には それも記載されています.
性別で差があるかどうかを見ると;

Kaku 2025 Suppl.

わずかに女性で低下が大きいように見えますが,これは多分有意差ではないでしょう.

BMIの高低で見るとこうでした.

Kaku 2025 Suppl.

これはくっきりと分かれています.明らかにBMI25以上のひとよりも,BMI25未満の人には「よく効く」のです.

そして,これは 試験開始時点でのHbA1cの高低で分類した結果です.

Kaku 2025 Suppl.

最初のHbA1cが高かった人ほど,よく下がりました.ただし,これはイメグリミンに限らず,あらゆる糖尿病薬(インスリン含めて)で普通に見られる現象です.最初のHbA1cが高ければ高いほど また下がる余地も大きいのですから.

こうしてみると,DPP-4阻害薬がイメグリミンと「相棒」を組むと,

  • 高齢者ほど
  • 痩せた人ほど
  • そして ひょっとしたら女性の方が

妙に相性がいいのかもしれません.

(C) せのきた さん

この試験は2年間にわたって行われますから,今後もこの傾向がみられるのか注目していきたいと思います.
残念なのは,試験参加者が117人と控えめなので,ここで示したサブグループ解析よりも更に詳細な解析(たとえば「BMI 20未満と BMI20以上で差があるのか」etc.)を行うには,人数が少なすぎて困難なことです. まあこれほどの厳密な試験(この試験は二重盲検比較試験です)を行うには 巨額の予算が必要なので,これが限界なのでしょうね.

更に興味深いのは,最近糖尿病薬でグングン売り上げが伸びている チルゼパチド(商品名:マンジャロ)とイメグリミンとは,インクレチン機構を活性化させるという意味では 似ているのに,片や肥満者に最適,こなた 痩せた人に好適,と対照的な特徴があることです. イメグリミンのミトコンドリアへの効果なども含めて,高齢者にとっては 希望の灯りなので,イメグリミンには声援を送ります.

  

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