この記事にも書きましたが;
境界型糖尿病とは,「健康保険を適用してまで治療する必要性が認められていない糖尿病」です. つまり「まだ糖尿病ではない」ではありません.病理学的には,境界型も糖尿病も本質的な違いはありません.
では,境界型糖尿病であっても,希望すれば治療してもらえるのでしょうか? 答えはYesでもあり,Noでもあります.
まずNoの理由から述べますと,「境界型糖尿病は いずれ本格的な糖尿病に移行しやすいと言われているから,軽いうちに治療してくれ」と 医師に要望しても断られます.
なぜなら 糖尿病診断基準を満たさない状態では,健康保険を適用できないからです. もちろんこの段階で治療を開始することは,医学的には十分意味があるのですが,健康保険適用外です. それでも医師が糖尿病治療を行い,かつ保険診療報酬を請求すれば,その医師は厚労省の監査で見つかって「保険診療医」資格を剥奪されます.
ですから,境界型糖尿病を治療しろと要求するのは,医師に「ただ働きをしろ」と要求しているのと同じことになります. 医師が断るのは当たり前ですね.病院は治療機関であり,予防医学は公衆衛生部門の仕事です.したがって,境界型糖尿病の段階,あるいは糖尿病の予防について助言を受けたいのであれば,行くべきところは病院ではなくて,保健所なのです.
そして,Yesの場合の理由も同じです. 保険診療ではなく,つまり自由診療であれば,境界型糖尿病の治療に応じてくれる医師は いるでしょう.もちろんこの場合は健康保険適用外ですから,全額 自己負担です.世の中には 糖尿病を保険診療ではなく,自由診療で行ってくれるクリニックもあります.ただ 実際には糖尿病治療という名目で,GLP-1ダイエットを行っているにすぎないところもあるようですが.
ただし,『糖尿病は 非常に早期の段階から徹底した治療を行う方が 結果として費用対効果は優れている』という考えもあります.

境界型ではありませんが,糖尿病と診断された直後からインスリン注射を開始した人は,そうでない通常の糖尿病治療を受けた人に比べて,1年後には糖尿病が寛解した人が多かったのです.(51.1% 対 26.7%)
つまり,まだ糖尿病が初期または軽症であっても,早期から治療を開始して 膵臓の負荷を軽減させるのは効果的であることを証明した研究です. なので,境界型であっても,というか境界型だからこそ徹底した治療を行うのは十分に意味があります.
風邪をこじらせてから病院に駆け込むよりも,風邪気味の段階で十分に休養し 早く直してしまうのがいいのと同じですね.
もっとも日本の「糖尿病が強く疑われる人」は約1000万人,「糖尿病の可能性を否定できない人」約1000万人を合わせると約2000万人と推定されています. これらの人に一斉に集中治療を行うことなど不可能です.食事療法・運動療法で何とかしなさいという厚労省のスタンスも妥当でしょう.


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