出ませんね

日本糖尿病学会が4月に発行した『糖尿病診療ガイドライン 2024』には こう書かれています.

(C) 日本糖尿病学会

しかしながら 同じく日本糖尿病学会が3月に発行した『健康食スタートブック』には こう書かれています.

(C) 日本糖尿病学会

これはほぼ正反対ですね. ただ【A】は糖尿病専門医に向けた資料であり,【B】は 医療機関が患者教育に使うことを目的とした資料であり,想定している読者対象は異なります.ただそれにしても,専門医に向けて言うことと,患者に向けて言うことが ほぼ正反対です.つまり二枚舌を使っているわけです.

ところで日本糖尿病学会が発行する資料はもう一つあります. それが『糖尿病治療ガイド』です.

(C) 日本糖尿病学会

『糖尿病診療ガイドライン』が糖尿病専門医に向けたもの,『健康食スタートブック』が患者本人に向けたものであるのに対して,この『治療ガイド』は 両者の中間に位置する医師,すなわち 一般内科医に向けたものです. 日本の糖尿病患者の治療にあたっているのは,実はほとんどが一般内科の医師なのです. なにしろ 糖尿病専門医は全国で 6,000人ほどいますが,糖尿病で通院・入院している患者は330万人もいるので,患者の全員が専門医にかかれるわけがありません. ですのでほとんどの糖尿病患者は 全国に7万人ほどいる 一般内科医で治療を受けています

こういう事情なので,学会は 実際の糖尿病治療を担っている 全国の一般内科医を対象に 『糖尿病治療ガイド』を発行しています.内容としては専門医向けの『診療ガイドライン』のDigestという位置づけであり,頁数も『診療ガイドライン』の500頁以上に対して,『治療ガイド』は150頁程度,価格も前者の約5,000円に対して 後者は1,000円程度と 求めやすく使いやすくなっています.

ですから,『診療ガイドライン』と『健康食スタートブック』で,糖質制限食について,上記の通り いわば正反対の表現をしている,この状況を『治療ガイド』にどう表現するかで,学会の内部でも意見が割れているのではないでしょうか. その証拠に;

例年4月に発行されてきた最新の『治療ガイド』は,7月になった本日時点でもまだ発行されていません.

つまり発行が著しく遅れています.

最近10年間を見ると,これほど治療ガイドの発行が遅れたことはありません.

もう少しさかのぼってみると,2010年の治療ガイド発行は 2010年10月と大幅に遅れました. ただしこれにはもっともな理由があります.この年7月に糖尿病の診断基準を大幅に改訂したからです.従来は目安に過ぎなかった HbA1c値を正式に診断基準に取り入れたこと, しかも そのHbA1cの測定値を従来の日本糖尿病学会の独自基準(JDS値)から世界共通の方式値(NGSP値)に切り替えたことなど,たしかに前年までの治療ガイドとは 内容が様変わりしたのですから,大幅な原稿書き直しとなり改訂発行が遅れたのは当然でしょう.

では,今回は なぜ例年通りのペースで発行できなかったのか? やはり 2010年と同様に 大幅な改訂が行われた(または行おうとしている)からと見るのが自然でしょう.

仮にですが,本年発行の『糖尿病治療ガイド 2024-2025』が とんでもなく遅れて発行されたにもかかわらず,内容的には前版(2022-2023版)と大同小異であったら,いったい何をやっていたんだということになりますね.

 

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