[学会情報] 糖尿病ならまず専門医か

人間ドックや職場の健康診断などで,尿糖を検出,あるいは血糖値やHbA1cが高いとわかり,『早く病院に行った方がいいですよ』と言われる人は多いです. 糖尿病の自覚症状は皆無といっていいので,そういわれても『糖尿病って何?』という人は,どの病院の門を叩けばいいのでしょうか?

糖尿病専門医は全国にいます

しかし,最新の数字でも糖尿病専門医は全国に6,000人弱しかいません. 一方 現在糖尿病で治療又は経過観察のため通院・入院している『糖尿病患者』は全国に330万人もいます. もちろん,この数字は[予備軍+糖尿病疑いの人]まで含めると合計2,000万人にもなります. もしこれを専門医だけで診察・治療しなければならないとなれば,専門医1人あたり,3,300人の割り当て患者となり,医師が不眠不休で頑張っても,患者は1年くらい順番待ちになってしまいます.

実際には ほとんど一般内科医が治療しています

ですので,実際には 専門医ではない一般内科医で治療を受けている糖尿病患者の方が圧倒的に多いのです.
日本全国の医師は26万人,内 約 7万人が一般内科医です.一般内科医は,開業医のこともありますし,大きな病院の勤務医,どちらにもいます.

では,専門医にかかるのと,近くの開業医にかかると,何か違うのでしょうか?

専門医と内科医の治療状況

第62回JDS 学術集会 3-P-17 で,全国の医療機関にアンケートを依頼し,回答のあった463施設における糖尿病治療中患者8,070名のデータをまとめたものが報告されていました.

治療にあたる医師と,その担当患者の内訳は

  • 専門医は79名.担当する患者 1,545人 (医師一人当たり患者19.6人)
  • 一般内科医は384名. 担当する患者 6,525人 (医師一人当たり患者 17.0人)

と,どちらも同じような担当人数です.

そこで治療成績を見ると

専門医で治療中の患者の平均HbA1cは6.9%,ところが一般内科医で受診中の患者の平均HbA1c 6.8%だったのです. わずか 0.1%の差ですが,対象人数が多いので,この差は『統計的に有意』でした.

『専門医に診てもらうと糖尿病が悪くなる!?』

いいえ,それは早合点です. なぜなら 専門医・開業医 それぞれで患者が現在どういう治療を受けているかをみるとわかります.

一般内科医の患者の90%以上が 投薬なしか,投薬だけなのに対して,専門医が受け持っている患者は,インスリンやGLP-1作動薬などの注射薬,およびそれらと経口薬も併用している患者が30%近くもいたのです. 経口薬だけでは血糖値を抑えきれなくなった重症の患者が専門医に回されているので,患者のHbA1c平均値が高く出たということです.

つまり,専門医に行ったからHbA1cが上がったのではなくて,HbA1cがなかなか下がらないから専門医に紹介されているということなのでしょうね.

統計学で言う『相関関係における因果関係の逆転』という現象の一例です.

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