[アイキャッチ画像:岸田劉生『切通之写生』]
【この記事は 第65回日本糖尿病学会 年次学術集会に参加したしらねのぞるばの 手元メモを基にした感想です. 聞き間違い/見間違いによる不正確な点があるかもしれませんが,ご容赦願います】
大阪市内を歩いていると,よく方角を間違えます.大阪市内は おおむね平坦な地形で,ビルが立て込んでいるところでは,太陽の方角から判断することも困難です.
一方 神戸っ子は絶対に方角を間違えません.六甲の見える方角が北だからです.
そして,おおざっぱに見れば,神戸は六甲から海岸までほぼ一定の傾斜の斜面地形です.このことは 神戸の住宅地では平坦地というものはほとんどないことを意味します. 坂道ばかりです.
そう思っていたら,こんなポスター発表がありました.
P-34-3
『斜面土地に在住する糖尿病患者における坂道への認識の違いによる影響』
面白いですね.学会といってもおカタい発表ばかりではないのです.
いったいなぜ こんなことを調べたのだろうと思い 発表者を見ると,国際医療福祉大学 熱海病院の先生でした.
私は 熱海の温泉が好きで ほぼ毎月のように常宿の温泉ホテルに行きますが,たしかに熱海も平坦地は全くと言っていいほどありません. 急坂/急カーブばかりです.
で,この病院は熱海の海岸にありますが,通院患者は熱海在住の人が多いですから,斜面に暮らしているわけです.
『糖尿病には日常の運動習慣が重要』とはよく言われますが,熱海の糖尿病患者は,坂道をどう考えているのか調べた報告です.
通院している糖尿病患者18人に,『近所には坂が多く,歩くのが大変だ』という質問に対して [そう思う]/[思わない]を回答してもらいました.
その結果,坂道なんぞ何でもないさ,という『肯定的に考える人』=【肯定群】と,『坂道はいやだ』=【否定群】では,大きな差が見られました.
両群を見比べると,
- 【肯定群】の平均年齢は 60.3歳,平均BMIは30.9
- 【否定群】の平均年齢は 73.0歳,平均BMIは26.2
【肯定群】は相対的に若いですが,かなりの肥満です.一方【否定群】は高齢でそれほど太っていないにもかかわらず,やはり坂道を苦痛と思うのは年齢が支配しているのでしょう.
さらに,坂道を肯定的に考えるか否定的に考えるかで,日常の活動量には大きな差が出ていました.
アンケート形式で日常の活動量を推定するIPAQ によれば;
【肯定群】の平均活動量は 平均 1819kcal
【否定群】の平均活動量は 平均 278kcal
年齢差もありますが,やはり坂道を苦にしない人は日常生活でよく動いているようです. 逆に坂道を苦痛に感じる人は,全般に体を動かさないようです.
なお,両群で HbA1cや空腹時血糖値に差があったのかどうかは報告されていませんでした.
[続く]
コメント
私の故郷は高知県の海岸線ですが、高知県は全国一の森林県です。四国の中では面積が一番広い県ですが大半が山地です。そしてその山は県の北側の四国山地です。南側には海があり振り返ると山がある。そして平地は東西に広がっていると言う地形です。
そう言うところで生活していると海と山を見れば方角はおよそ検討がつくし、地形はどこに行っても東西方向がメインの通りになっていることが多く、迷うことがありません。この感覚に慣れ親しんでいると大阪のような面的に広がっている地形、しかも目印になる山が見えないような所は超苦手なのです。数十年住んで慣れましたが、日本海側に行くと北側に海があることが多く、今でも不思議な感覚になってしまいます。
>大阪のような面的に広がっている地形、しかも目印になる山が見えない
そもそも大阪市内の山といったら天保山だけですからね. だからこそ 『大阪市山岳会』のようなプロ集団が成立するのですw