テロメアは,人体の細胞が増殖のために分裂する際に,染色体のDNA情報が失われないように保護する役割を果たしていること,そしてその犠牲となって,細胞分裂をくり返すたびに,テロメアの長さは『すり切れるように』短くなっていく..これが前回までの記事です.
加齢とテロメア長
そうであるなら,テロメアの長さは ヒトの老化の指標であるということになります.
実際この文献でも;
テロメア長は.老化のバイオマーカー(Biomarker)になり得ると述べています.
しかし,テロメア長が老化の指標ではあっても,寿命とストレートに相関しているかどうかは不明のようです.
疾病とテロメア長
一方で,テロメア長と循環器系疾患とのリスクは 多くの文献で報告されています.
これは 中国の脳卒中患者(オレンジ)と健常人(緑)とで,年齢(横軸)とテロメア長(縦軸)の関係を調べたものです.
年齢が高いほど(横軸 右へ)テロメア長が右下がり,つまり短くなっていきます.又 脳卒中発症者(オレンジ線)は,同年齢の健常人(緑線)よりテロメア長が明らかに短いです. グラフの縦軸はテロメア長の対数表示なので,傾きが緩いように見えますが,グラフの左右では テロメア長が3割ほど短くなっています.
これは脳梗塞既往者のテロメア長を調べたものです.やはり高齢になるほど,かつ脳梗塞発症者ほどテロメア長は短くなっています.
なお,この文献では『激しい運動をする人ほど,テロメア長は有意に短かった』とも報告されています.激しい運動で新陳代謝を高めると,それだけ体細胞の分裂回数が増えるので,テロメア長が短くなる速度が速いのでしょう.
これ以外にも多くの文献で,循環器系疾患罹患者のテロメア長は短くなっていることが多数報告されています.
..なのですが,これが糖尿病との関係になるとどうもはっきりしません.
[5]に続く
コメント