問題と正答
今回の国家試験 全200問中,『糖尿病』という単語が登場したのは合計 4問でした.以下 厚労省が公表した正答と併せて再掲します.
第24問
解答の(1)から(3)は,まるで正反対で明らかに間違いです. 解答の(5)で,OGTTは耐糖能を推定するための試験ですから,『糖尿病網膜症の有無』は判定できません. HLA(Human Leukocyte Antigen=ヒト白血球抗原)が何かを知らない人でも,消去法で簡単に正解できるでしょう.
第116問
例年通り,糖尿病の食事療法についての知識を問う問題です.
『糖尿病食事療法のための食品交換表』という名称のガイドブックには 何が書いてあるのかを正しく理解しているのかどうかを問うているだけであって,それ以上の意味はありません.回答選択肢も,(1)~(4)の回答は,食品交換表の記載からかけ離れた記載ばかりですから,容易に正答できるものです.
ただ『ん?』と感じたのは,回答(3)です.もちろん食品交換表には 『炭水化物カロリー比率は50~60%』と書いてあるので,これは間違いです.しかし 一昨年までの出題傾向であれば,この記事に書いたように『炭水化物カロリー比率50~60%が正しい食事療法である』ことを正答とする問題にしたはずです. それを今年は無くしました.
しかし『炭水化物比率 40,35,30%』,これは あきらかに『糖質制限食』のことです.つまり『糖質制限食』という言葉を使わずに,『糖質制限食は 誤った食事療法である』というイメージを出すために,こういう回答を用意したのではないかと勘ぐっています.
第136問
妊娠糖尿病で,良好な血糖コントロールを保つための知識を問う問題です.患者は肥満(BMI=26.8)ですから,回答(1)は明らかに除外され,回答(2)(3)(5)は,妊娠糖尿病でなくとも 不適切な栄養管理ですから,(4)が正答として残ります.
もっとも,最近は妊娠糖尿病の妊婦にインスリンをバンバンと打つようですから,個人的には起床時血糖値=70台が健全とは思いませんが.
第140問
共に栄養不良,特に 貧困国においてみられる,子供のクワシオルコル(蛋白質不足)とマラスムス(絶対的カロリー不足)という用語を知っているかどうかを問う問題です.他の選択肢からの消去法でも(3)が正答ということになるのでしょうが,『クワシオルコルの子供とマラスムスの子供が一つの地域に共存することは,理論的にみて絶対にありえない』という意味ではありません. ここでは問題文に『栄養不良の二重負荷』,つまり『相反する栄養状態』がどうかを聞いているのですから(3)は誤答ということになります.つまり,この問題は『栄養不良の二重負荷』を正しく理解しているかを問う問題です.
ただし,少し気になったのは 回答(1)が『栄養不良の二重負荷』の記述として『正しい』とされている点です. 『2型糖尿病と痩せ』は二重負荷である=つまり相反するものである=2型糖尿病は肥満である と決めつけているからです.
以上を総括すると,本年の管理栄養士国家試験においても,『唯一の正しい糖尿病食事療法は食品交換表のみであり,それは炭水化物カロリー比率 60%である』を正答とする問題は姿を消しました.
[3]に続く
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