食事療法の迷走[25] 2002年 食品交換表 第6版に改訂

食品交換表 第6版

2002年に食品交換表は第5版から第6版に改訂されました.

(C)日本糖尿病学会

第5版から第6版への変更点は ごくわずかで3箇所だけです.
ただし そのうち2箇所は,本質的な変更ではありません.

1つは,2001年に『日本食品標準成分表』が四訂から五訂に改訂され,成分含有比率が変更された食品が出てきたので,それに基づき交換表の「1単位」が示す食品の重量データの修正を行いました.
そしてもう一つは,同じく2001年に法令改正(保健婦助産婦看護婦法 → 保健師助産師看護師法)により『看護婦』が『看護師』となったことから本文中の『医師・看護婦』を『医師・看護師』にあらためました.

以上は いずれも当然改訂すべき点ですが,内容そのものの本質的な変更ではありません.

しかし3番目の変更だけは異なります.数値上は小さな変更ですが,考え方そのものにかかわる変更でした.

第三の変更点

食品交換表の第1版から第5版までは,1,200kcal(15単位)のカロリー設定食は,一貫して下記の栄養素比率でした.第5版でも,1,200kcal設定食以外は すべて同じ比率なのに,この1,200kcalだけは比率が異なっています.

この理由は,『蛋白質・脂質には必須最低摂取量があるから,どんなに設定カロリーが低くても,摂るべきものは摂らねばならない』という食品交換表第1版からの考えが踏襲されていたからです.つまり栄養素比率という『相対比』ではなく,必須最低摂取量という『』を優先していました.これだけは第5版でも踏襲されていたのです.そして,これは十分 科学的根拠のあるものでした.

ところが,これが第6版ではこうなりました.

第5版までは,必須の最低摂取量であったはずの脂質の比率を減らしたのです.
その結果,第6版では 設定カロリーにかかわらず,炭水化物/蛋白質/脂質 は ほぼ同じ比率に統一されました.

カロリーに寄らず比率を一定にした

人体に必須の最低所要量ではなく,栄養素の比率を揃えることを優先したのです.
この比率変更につき,序文ではこう述べているだけです.

また15単位[注:1,200kcal食]の指示例では,我が国の栄養摂取状況の問題点を考慮して脂肪エネルギーを抑えるために,表3を 初めて4単位から3単位にしました.

食品交換表 第6版 序

これ以外の説明はありません.しかし『脂質の過剰摂取はよくない』というのであれば,むしろ1,500~1,800kcal設定食の方が脂質の絶対量は多いのですから,筋が通りません.

[26]に続く

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