新型コロナウイルス:BCG説を考える[2]

【注意】
この記事は 新型コロナウイルスについて,BCGワクチンが予防や重症化防止に有効であると主張するものではありません.あくまでも現時点で仮説の1つとして情報を整理することだけが目的です.

BCG説とは

新型コロナウイルスの死亡率にBCGワクチン接種率が関係しているのではないかという報道がみられます.最初は噂話程度だったのですが,医学専門誌 The British Medical Journal (BMJ)で,この論文原稿が公開されて 俄然注目を浴びるようになりました.

疫学研究:BCGワクチン接種方針とCOVID-19の罹患率および死亡率の低下との相関関係:

ただし この報文は,preprint,つまり未査読の原稿ですので,報文として確定したわけではありません. 査読完了時点で大幅に内容が変わるかもしれませんし,取り下げられる場合だってありえます.

したがってこの記事では,一応 この文献とは独立して,現時点で公開されているデータ・公式発表だけを対象にして整理してみたいと思います.

新型コロナウイルス感染状況

刻々と数字が変わっていますが,2020年4月17日 07:40の時点では,世界で感染者合計 約214万人,死者合計 約14万3千人と,依然 終息傾向はみられません.
国別分布では;

Johns Hopkins Univ.

上図の通りで,感染源である中国の姿がすっかり目立たなくなるほど,欧米での感染者が増えてきました.


(ただし,中国は『無症状の感染者は,感染者にカウントしない』と言明していますから,この図が現状を正確に表しているとは言えません)

BCGワクチン接種率との関係

BCG説が出てきたのは,上図の状況と,世界のBCGワクチン接種体制とが 非常に強く相関しているように見えるからです.

The BCG World Atlas

この図は 非営利団体 BCG AtlasのWEBサイト が世界各国のBCGワクチン接種体制状況をまとめて公開しているものです.

  • 緑色の米国・カナダ・オランダなどは,かつてBCGワクチン接種を一度も国民全員に義務付けたことがありません
  • また紫色のEU諸国とオーストラリアは,かつては国民全員又は大多数にBCGワクチンを接種していたのに,現在では『結核は撲滅した』として,接種をやめてしまった国です,
  • それ以外の水色の国々は,現在もBCGワクチン接種を行っています. まだ結核で死ぬ人が多い 発展途上国がほとんですが,日本は先進国では珍しくまだ国民全員がBCGワクチン接種を受けている国です.

一目瞭然,この2つの図を見れば,だれでも 「BCGワクチンを受けている国の人は新型コロナウイルスに感染しにくくなるのではないか」と思って当然です.

しかし,統計学では『相関関係がみられるからと言って,因果関係があるとは限らない』『まったくの偶然で相関関係があるようにみえる【偽相関】現象も存在する』ことは常識です. このBCG相関は本当なのでしょうか?

[3]に続く

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