メトホルミンは腸で効く→では腸内細菌は?[3完]

前回記事では,

  • [糖尿病でメトホルミンを服用している人]
  • [糖尿病だがメトホルミンを 服用していない人] 及び
  • [糖尿病ではない人]

これら3群の間に腸内細菌に違いがあるのかを調べた結果をとりあげました.

原文の Fig.1A を簡略化
Diabetes Care 2017;40:54-62

この結果を見ると,糖尿病でない人に比べて,糖尿病だがメトホルミンを服用していない人は,腸内細菌の種類が少なくなっています.それに対してメトホルミンを服用している人は,細菌の種類が増えていることがわかります. ただし,そのパターンは非糖尿病と同じではありません.

そこで,メトホルミンを服用している人には,どんな腸内細菌が多いのか調べてみたところ;

原文の Fig.3 を簡略化
Diabetes Care 2017;40:54-62

アッカーマンシア・ムシニフィラ菌 (Akkermansia muciniphila)とブチリビブリオ菌 (Butyrivibrio)が多いことがわかりました.

アッカーマンシア・ムシニフィラ菌 (Akkermansia muciniphila)とは

消化管の粘膜表面は,ムチンというネバネバの糖蛋白質で自らを保護していますが,アッカーマンシア・ムシニフィラ菌は,そのムチンを餌として棲息する細菌です.ただし有害ではなく,動物実験ですが この菌が少ないと肥満・糖尿病にになりやすいことが見出されています.

PNAS May 28,2013 110(22) 9066-9071

ブチリビブリオ菌 (Butyrivibrio)とは

またブチリビブリオ菌は,短鎖脂肪酸である酪酸を産生する菌で,大腸内の抗炎症保護作用や,大腸がんの予防・悪化防止に効果があるのではないかと言われています.

ここでもメトホルミン

これらの菌が,血糖コントロールとどのような機序で関係しているのかはまだ研究中です.しかしメトホルミンの主作用は肝臓に直接働きかけて糖新生を抑制することだと長年信じられていたのですが,実は腸内環境を変えて,特定の嫌気性腸内細菌を増やしているという作用もあることがわかりました.

【腸内細菌 完】

コメント

  1. でん より:

    最近食後血糖値が高いことがわかり、他の人はどうしているのかブログを読み始めました。
    すごい情報量で読むのが楽しみです!
    自分でも血糖値を測ってどんな食べ物で上がりやすいのかブログをはじめてみました。

    • しらねのぞるば より:

      本ブログに目をとめていただきありがとうございます. ご意見・ご質問は 大歓迎ですのでお気軽にお寄せください.

      >ブログをはじめて
      どのブログでしょうか?

      • でん より:

        返信ありがとうございます。
        こちらです→http://blog.livedoor.jp/doa_den/

      • でん より:

        返信ありがとうございます!
        私のブログです↓
        http://blog.livedoor.jp/doa_den/
        返信したと思ったのですが出来ていなかったようなので再度書き込んでいます。ご迷惑でしたら消してください。

        • しらねのぞるば より:

          二度手間になり申し訳ありません. ほとんどのブログ同様,このブログもコメントは承認制ですので,私がログインするまでは表示されません.

          ブログ拝見し,BookMarkしました. 私も糖質制限初期までは,あらゆる食事と その後の血糖値を記録してデータベースに放り込んであります.

  2. かかか より:

    メトホルミン、不動の立ち位置ですね。
    「腸内細菌を増やそう!」。言うのは簡単なのですが、案外難しい。発酵食品を食べ続けても多分なかなか細菌叢までは変えられないような…大腸カメラで一掃しても、多分新しい菌の植え付けはできないような…
    一言でいうなら、私は便移植したいです!何を食べてもHb a1cが5.5を超えない家族の便をもらいたい!

    • しらねのぞるば より:

      > 便移植したい

      これもよく聞くのですが,効果はどの程度なのでしょうね.一度調べてみます. ただ菌を移植しても,もともとそれらの菌の棲息に適した環境でなかったから淘汰されていったのではないかと思うのですが.