病院の測定値に誤差はあるのか
結論から申しますと,病院での測定といえども(たとえ大学病院であっても)百発百中で 誤差ゼロというわけではありません.
測定器である以上,どんなに高価・高級なものであっても,誤差は必ずあります.
偏差と精度
ここに 正確に HbA1c= 7.00% のサンプルがあったとします.これを標準サンプルとして,複数の異なる病院又は検査専門機関で同じものを測定してもらったら,こうなるべきでしょう.
3か所の測定機関で,この標準サンプルを5回ずつ測定したもらった結果です.同じ色の〇は,同じ測定機関で測定した結果です.どこで測定しても,何回測定しても,ドンピシャリ 「HbA1c= 7.0%」 という結果を出してきました.本来こうあるべきですし,患者の立場としては「お医者様」が使う数字なのだからこうなのだろうと信じています. しかし,実際はこういう場合がほとんどです[以下は 『誤差の概念』の説明図です.実在の医療機関のデータではありません].
Aの測定機関(赤〇)では,測定値の平均値が多少高いほうにずれています, 一方Bの機関(青〇)ではやや低いほうにずれています.
さらにCの機関(緑〇)では平均値は たしかに7.0%になっていそうですが,それは平均をとればそうだというだけであって,個々の測定はかなりバラツいています.「測るたびに違う結果が出る」つまり測定性に再現性がないのです.
A機関やB機関での測定には,正しい値に比べてズレがあるので『偏差が大きい 』
一方 C機関での測定は,同じ試料なのに 測るたびに違う値がでるので,『精度(再現性)が低い』
ということになります.
医療機関の検査であっても,上記のようなことは実際に起こっています.
患者からみれば
上記の結果をとりまとめてみれば,この図のような結果になります.
患者は 多数の病院を『ハシゴ』して,いろいろなところで何回も測定してもらうわけにはいきませんから,実際に患者に渡される「検査結果」の表には,この図の内の1つの〇があたるわけです.
もちろん,医療機関の精密・高価な測定器である以上,家庭用の測定器(SMBG,リブレ)のようにとんでもない値が出ることはありません.ですが,誤差が完全にゼロということも またありえないのです.
理想の測定と現実の世界は 同じではありません.
[3]に続く
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