「とむ^^2型糖尿病」様から ご質問をいただいております.
私は2型糖尿病になって1年半になります、糖質制限は始めて1年になります。
薬は今年の春ぐらいから服用していません。
HbA1cも6.0から5,8を行ったり来たりしています。
しかし最近 起床時の血糖値が高く135~165もある時が
そんな時はサラダだけ食べます。どうして良いか思い悩んでいます。
私の担当医は何を聞いても『あなたは大丈夫だから』と話を終わらせてしまいます。
こんな質問されても困りますよね
起床時の血糖値下げる方法知りませんか?
あったら 教えてください(__)
私も悩まされました
糖質制限食を始めたら,食後の血糖値は(当然ながら)すぐに下がりました.
ところが,朝 起きた時の血糖値が高いのには 私も悩まされましたた.
就寝前よりも 朝起きた時の方が血糖値が高くなる,いわゆる『暁現象』です.これが起こると朝からやる気をなくしてしまいますね.
『暁現象』とは,人が目覚める時刻の数時間前から起床に備えて,コルチゾールなどのインスリン拮抗ホルモンの分泌が始まるために,じわじわと血糖値が上がる現象です,ただし 健康な人では,同時にそれをキャンセルするようにインスリンの分泌も少し増えるので,起きた時に血糖値が高くなることはありません.
本当に暁現象かどうか
ただし,とむ^^2型糖尿病 様の朝の血糖値が高いのは,本当に『暁現象』なのかどうかは,一度確認しておいたほうがいいと思います.
方法は,午前3時頃までは血糖値が低い(=寝る前と変わらない)かどうかを調べることです. 偶然 午前3時頃に目覚めたら,その時の血糖値を測ってみるのです.無理ならば一度目覚まし時計でもかけて調べるしかありません.
夜中の血糖値は高くないのに,それから起きるまでに血糖値が上がったのなら,間違いなく『暁現象』です.
しかし,そうではなくて,夜中から既に血糖値が上がっていたのなら,別の原因を考えねばなりません.
朝の血糖値のバラツキを見る
間違いなく『暁現象』であれば,起床時の血糖値のバラツキが どういう傾向なのかを把握しましょう.血糖値が高いか低いかではなくて,そのバラツキ具合です.
下は一例ですが,3月と4月とで,起床時の血糖値がこうだっとします.
どちらもやや高めの値が続いています.
グラフにするとこうです.数値の高低だけを見ると,3月よりむしろ4月の方が悪くなったようにも見えます.しかし,実はそうではありません.
実は4月の方が改善傾向なのです.
バラツキに着目
3月と4月は朝の血糖値の平均値は同じなのですが,そのデータの暴れ方(=バラツキぐあい)を『標準偏差』でみるとこうなります.
『標準偏差』とは,データがどれくらいの範囲でばらついているかを数値化したもので,小さいほど バラツキの少ないことを意味します.
4月の標準偏差は,3月よりも4割近く 小さく,バラツキが小さくなる傾向であるとよみとれます.これはグラフの各点の『ばらけぐあい』を見ると 納得できると思います.
そして,このバラツキが小さくなると,朝の血糖値の平均値もしだいに下がっていきます.私の例ではこうでした.
赤いヒゲの長さが,標準偏差の値です.ご覧の通り,まずバラツキが小さくなり,それから平均値も下がり始めました.
この理由ですが,一般に 血糖値の変動は,糖尿病の程度と相関することが確認されています. つまり 糖尿病が軽くなるほど血糖値のバラツキは小さく,糖尿病が悪化すると血糖値も上がるし バラツキも大きくなっていくのです.
したがって,1週間単位とか 10日単位で朝の血糖値を表にしてみて,そのバラツキ具合を継続的に観察し,小さくなるような生活習慣を探すのがいいと思います.
私の場合では,
- 糖質制限食でも,特に夕食の糖質は少なくした.
- 夕食は遅くとも19時に終えるようにし,食後はよく歯を磨いた(*).
- 夜食・間食は 一切なし 歯医者に通いつめて,徹底的にケアしてもらった(*)
- 就寝は遅くとも22時
- 寝る直前に,殺菌うがい剤でうがいをした(*)
を行いました.
(*) 夜間は,歯周病菌の活躍タイムです.炎症があると,人体の防衛反応で血糖値はあがります.これらはすべてその対策です.
なお,根本的な解決法ではありませんが,暁現象は 目覚める 2~3時間前から血糖値が上がり始める現象なので,午前3時頃に少量のメトホルミンを服用すると,ピタリとやみます.この方法と結果は,江部先生のブログにて報告しました.
糖尿病の程度が軽くなれば,必ず 解消できるはずですので あきらめずに取り組んでください.
コメント
私も耐糖能の改善と共に早朝の血糖値も下がって安定して90前後に落ち着いています。
たまに高い時(110以上)がありますが、この理由はよくわかりません。
そして不思議なことにずっと、夜が最も耐糖能が良かった(飲酒のせいだと思っていた)のですが、最近、昼食時の耐糖能が最も良い日が増えています。朝の耐糖能が一番悪いのは相変わらずですが、それも差が少なくなっています。朝の耐糖能の改善と夜の耐糖能の悪化(と言うほどではないですが)は相関しているように見えます。
もう少し観察が必要ですが、何か新たな事がわかるかもしれません。
日中の糖応答は 昼間の活動度に影響されそうですね.
おはようございます。
朝早くからの ご回答有難うございます。
午前3時の血糖値検査と、一周間の朝の血糖値を表にしてみます。
ホントに 解りやすい説明で嬉しいです。
歯医者には月一でメンテに通っていますし(かれこれ7年)
歯磨きも一日3回! でも、夜の糖質は少しゆるくなっていたかもです。
暁現象だった場合、『メトホルミン』出して貰えるかは・・・?
あと、HbA1cの安定=糖尿病の程度が軽くなってるではないのですね?
またまた勉強になりました。少しずつですが自分の糖尿病のありかたが
見えてきそうです。有り難うございますm(_ _”m)
データが貯まったら また教えてください.
ほかの人の生データは,自分にも非常に参考になりますから.
了解です。
その時は 感想を聞かせて下さい。