学会のポスター発表(第62回JDS 学術集会 2-P-393)で報告されていました. 最近こういう報告は多くて,よくみかけます.
アンケートの対象
対象者は糖尿病で通院してくる患者370名で,年齢構成は以下の通り. 60代以上の高齢者が多いです.
なお,370名中 54名 が1型糖尿病ですが,その年齢構成は不明です.
この方たちに学会発表の同意を得たうえで,アンケートを行いました.
アンケートの質問と回答
糖質制限食を実行していますか?
この質問に実に全体で67%の人が,「糖質制限食を行っている 」 と回答しました. 60歳以上の方が多いのに,この高い割合には驚きました. 学会会場で,『既に多くの患者が実行しているのに,学会はいつまで糖質制限食を無視するのか』という声が出るのも当然でしょう.
糖質制限食をしようと思ったきっかけは?[複数可]
- 医療従事者からの勧め 73.3%
- 家族・知人からの勧め 9.3%
- 興味があったから 4.9%
- その他 8.9%
- 無回答 8.9%
糖質制限食についてどこから情報を得ましたか?[複数可]
- 医療従事者 73.3%
- テレビ 19.4%
- 本・雑誌・新聞 14.2%
- 家族・知人 8.5%
- ネット 5.3%
- その他 1.6%
- 無回答 6.1%
糖質制限食で何を減らしていますか?
- 主食のみ 75%
- 主食及びそれ以外も 22%
糖質制限食で何が増えましたか?
- 野菜 53.8%
- 魚・肉・卵等 27.5%
- 米をもち麦や玄米に/パンをライ麦や全粒に 14.6%
私もそうですが,糖質制限食を行うと,まず野菜が増えるのです. 米国出張した時にはヴィーガンに間違えられるほどでした.
「米を食べないと食物繊維が不足する」という人は,「頭の中で想像した糖質制限食」なので,そういう結論になるのでしょうね. やったことも見たこともない証拠です.
糖質制限食をしていることを医療従事者には
- 伝えている 50%
- 伝えていない 18%
- 無回答 32%
無回答の人が,「医師には内緒」であるとしても,半分は医師も知っているわけです. 頭ごなしに糖質制限食を否定する医者は,むしろ患者からそっぽを向かれるようになったということでしょう.
患者は学会のずっと先をいっています
7割の人が糖質制限食を行っていて,しかもそれは医師又は管理栄養士が勧めたから,というこの現状. 学会もこれではいつまでも無視を決め込むことはもはや不可能でしょう. ではありますが,学会の中には それでもなお強硬に反対する人がいるというのも事実.
他の分野,たとえば高血圧や脂質異常症の分野でも,たしかに現在の診断基準・治療法が妥当なのかという意見はありますが,しかし学会指針がこれほど患者に軽んじられている世界も珍しい. なにより患者に直に接している治療最前線では,既に 医師自身が糖質を減らすよう指導しているのです.
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