前回の記事 に書きましたように,この比較は厳密なものではないことをおことわりしておきます.
非肥満で耐糖能が正常
日米で,血糖値・インスリンの変化ができるだけ似ている人を選びました.
本質的には同じパターンなのですが,日本人(左)のインスリン分泌総量は(曲線下面積でみて)米国人の半分以下です.
非肥満で軽度の糖尿病
血糖値だけを見ると,境界型糖尿病と診断される日米の2例ですが,その病態はまったく異なることを示す好例です.やはりインスリンの分泌量がまるで違います.
糖負荷試験に2つの血糖値ピークがあるのは普通の現象
なお,上記2つの日本人のグラフで,上昇した血糖値が途中で一旦下がりまた上がる[=二峰性]のは,このケースに限らずそう珍しいことではありません.というか, 鹿児島大学 納先生のHP を見ると,実に26人中18人が二又は三峰性でした. それどころか,CGMを付けたまま糖負荷試験を行ったところ,全員で2つの血糖値ピークを認めたという報告 すらあります. しかもこの報告の重要な点は,インスリン分泌にも2つのピークがあったということです. つまり,これは普遍的な現象であり,ただ糖負荷試験では,通常 30分以降は1時間おきにしか採血していないのでこの変化を見逃していたにすぎないと考えられます.この点に着目した研究者は非常に少なく,ほとんど論文が見当たらないですが,別途詳しく調べる価値がありそうです.
非肥満で明らかな糖尿病
日米でできるだけ似た形のグラフを選びましたが,血糖値上昇もインスリン分泌も緩やかに上昇して高血糖状態が長く続くパターンは共通しています. しかし,これくらいの糖尿病になっても,米国人のインスリン分泌は日本人よりはるかに多いという特徴は変わりません.
日本人には特有の糖尿病がある
以上見てきたとおり,日本人(多分 東アジア人)と米国人とでは,糖尿病診断基準で同じような糖尿病と判定される場合,肥満者も非肥満者も,インスリン分泌がまるで異なることがわかりました.もちろん皆様からお寄せいただいたデータの中には,米国人並みにインスリン分泌量が多い方もおられましたが,それは少数派でした.
日本人と米国人とで,こんなにも糖負荷試験の様相が違うのであれば,これらを同じ糖尿病とひっくるめてしまうのは間違いで,全く別の病気ととらえるのが正しいでしょう. Ahlqvist博士の論文 が指摘する通りです.
そこで,次回以降はこの日本人の糖尿病について,もう一段掘り下げてみようと思います.本当に『インスリン分泌不全』の一言で片づけてしまうのが正しいのだろうか?という視点です.
[続く]
コメント
たぶん、日本人と欧米人て身体の作りが全然違うんでしょうね。
外国のパンて外国人の唾液量に合わせて作られてるから日本のと比べてパサパサしてるって言いますし。
そういう分泌の違いから日本人は逆に筋肉が柔らかく発達していったんじゃないかな、って思います。
でももしかしたら100年後にはこういう日本人型も減っていくのかもですね。
> 逆に筋肉が柔らかく発達していったんじゃないか
はい,そう思います. 『日本人は農耕民族なので...』などと,したり顔での解説もありますが,メソポタミア文明,黄河文明などと比べれば,日本人は世界でも もっとも遅く農耕を始めた民族なのですから,これは的外れだと思います.
そうではなくて,小さな体格をこまめに動かして日々の生活を暮してきたことが,今の日本人の体質を形成してきたと思っています. 本日の記事は,この考えをまとめるうえでの第一歩でした.