インスリン分泌を改善するには_探索メモ003

身長と標準的BMIの関係

まず以下の2つの表をご覧ください.男女別に身長と平均BMIを表にしたものです.

小柄,標準,大柄とあるのは,その人の骨格には,その骨格に見合ったBMIがあるだろうという考えからです.

実はこれ1950年代の米国人のデータです

日本人のデータではありません.日本でもおなじみのメットライフ生命(Metropolitan Life Insurance Co.)が,1950年代から生命保険のセールスマン全員に持たせていた表です. 生命保険会社としては,保険に加入しようとしている人が,今後長寿なのか短命なのかを,契約締結前に精度よく予想する必要があります. 生命保険を契約してくれたはいいが,ろくろく掛け金を払わないうちに死なれては,保険会社の大損になるからです.

そこで,契約締結前に加入希望者の身長と体重を測って,『もっとも死ににくい身長・体重』からどれくらい外れているかを判定して,標準から大きく外れている人には高い保険掛け金を,標準から外れていない人には安い掛け金を提示していたようです.

もちろん,当時はBMIという指標はありませんでしたから,身長と体重を一覧表にした,名称も『Desirable Weights for Men And Woman』 (望ましい体重表)というものでした.

冒頭に出した表は,これを現在のBMIに書き直したものです.(元の表では,保険セールスマンがその場で客の身長・体重を測るため,身長は靴を履いた状態,体重は平均的な室内着を着たままの状態の数値が記載されていました.よって冒頭の表はそれを補正してあります)

米国人も昔は細かった

これを見ると,当時の女性の普通の体格の人は,身長に寄らず BMI=21 くらいが『普通』で,男性は BMI=22くらいが『普通』だったことがわかります. つまり,当時の標準的な米国人は,現在の日本人のような体格だったのです.

1960年代の米国人の糖尿病とは

なぜこの表を探したかというと,現在でも時々引用される古典的な論文;

Hobrokke S. Seltzer et al.,
Insulin Secretion in Response to Glycemic Stimulus: Relation of Delayed Initial Release to Carbohydrate Intolerance in Mild Diabetes Mellitus

J. Clin. Inv. Vol.46(3), 323-335: 1967

には,この米国人が細かった時代の健常人及び糖尿病患者について,それぞれ【当時の基準で分類した】肥満度別に,糖負荷(*)に対する血糖値及びインスリンの変化を詳細に調べていました. したがって,当時は,肥満をどう定義していたかを知る必要があったのです.なお,インスリン濃度の測定が現在とほぼ同じ方法という条件を付けると,このあたりが遡れる限界でした.

(*) ただし,糖負荷試験は現在のように一律75gではなくて,体重×1.75g/kgのブドウ糖.

現在の日本人は,当時の米国人とほぼ同じ体格だけでなく,自動車に依存した生活などライフスタイルも似ています.そこで当時の米国人の糖尿病とはどんなものであったのかを調べていく予定です.

[その4]に続く

糖負荷試験の実測値データを集めています

日本人に多い,【インスリン分泌不足の糖尿病】の原因を探るため,多くの方の糖負荷試験のデータを集めています.現在までこのブログをお読みいただいた方や,ネット情報などから 約100件のデータが集まっています. 皆様ありがとうございました.
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