【緊急】コロナウィルス肺炎 武漢感染者の臨床報告 Lancetより

1月24日付けで 英国医学誌 The Lancetに武漢で発生した新型コロナウィルス感染患者41人の詳細な臨床記録が報告されています.

中国武漢で2019新コロナウイルスに感染した患者の臨床的特徴

本ブログは糖尿病ブログですが,事態の緊急性を考えてこの報告文献を紹介します.

概要

2020年1月2日までに,武漢で入院した入院患者41人が,2019-nCoVに感染していることが確認された.

感染患者のほとんどは男性であり(41人中30人[73%]).糖尿病(8 [20%]),高血圧(6 [15%]),心血管疾患(6 [15%])を含む基礎疾患を有する者は(13 [32%])と半分未満であった.年齢の中央値は49.0歳. 41人の患者のうち27人(66%)が華南海鮮市場に立ち入っていた. 家族集団感染も1件存在していた

発症時の一般的な症状は,発熱(41人の患者のうち40 [98%]),咳(31 [76%]),および筋肉痛または疲労(18 [44%])であった.より少ない頻度で,喀痰(39人中11 [28%]),頭痛(38人中3 [8%]),喀血(39人中2 [5%]),および下痢(38の1 [3%])が見られた.

40人の患者のうち22人(55%)に呼吸困難が発症した(病気発症から呼吸困難までの期間の中央値は8.0日[IQR 5・0–13・0]).

41人の患者のうち26人(63%)がリンパ球減少症であった.

41人の患者全員に肺炎がみられ,胸部CTで異常な所見が認められた.

合併症には,急性呼吸困難症候群(12 [29%]),RNA貧血(6 [15%]),急性心臓損傷(5 [12%])および二次感染(4 [10%])が含まれていした. 13人(32%)の患者がICUに入院し,6人(15%)が死亡した.非ICU患者と比較して,ICU患者の血漿レベルはIL2,IL7,IL10,GSCF,IP10,MCP1,MIP1A,およびTNFαが高かった.

患者の情報・初期所見

原文 Table.1より抄訳

患者の精密検査結果

原文 Table.2より抄訳

感想

以下は文献内容ではなく,しらねのぞるばの感想です.

一見して分かるのは,感染元とされる武漢海鮮市場にまったく立ち入っていない人でも感染していたこと,及び家族間感染が発生していること,つまり【人から人への感染】が1月のこの時点で既に判明していたのです. 日本の『専門家』が,まだ「感染力は弱いから心配しなくていい」「人から人には感染しない」などと根拠のない楽観論をテレビに出て話していた頃です.

第二に目を惹くのは,感染症であるにもかかわらずリンパ球の低下,つまりまず免疫の低下が発生し,それから肺炎症状となることです. これは前回紹介した,米国初の患者の症状と似ています.

しかも発症した肺炎は,咳はひどいものの喀痰がない人もいて,典型的な肺炎症状ではありません.「コロナウイルスはそれほど強力なものではない.風邪程度にすぎない」といっていた「専門家」の意見には同意できません.

コメント

  1. 西村典彦 より:

    その頃、インフルエンザより感染力は弱く、致死率も低いと言ってたと思うのですが、それならなぜ、中国は大騒ぎになっていたのかを素直に考えた専門家はどれだけいたでしょう。中国の医療が劣っているからと見下していたのではないでしょうか?いくら中国でも今どき、通常のインフルエンザでパニックにはなりません。

    これが平和ボケした日本の実態ではないかとつくづく思う次第です。

    チャーター機で武漢から連れて帰った人を隔離せず家に帰す愚かさには呆れてしまいました。

    • しらねのぞるば より:

      厚労省の後手後手の対応ぶりが非難されていますね.
      しかし,役人が前例の範囲内でしか動けないのは当然のことで,法律の運用が役所の担当者の恣意的裁量で左右されてはなりません.ダイヤモンドプリンセスの乗客を降ろそうとしないのは,指定感染症に関する過去の検疫運用実績に縛られているのでしょう.
      したがって,前例踏襲しかしない役人が悪いのではなくて,緊急事態でもあるにもかかわらず 前例踏襲しかできない役人にすべてを丸投げした方が悪いと思います.

      早期に果敢な対策をとれる人を指名し,『責任は政治がとるから,必要なすべてを実行してくれ』とすべきなのでしょうが,では日本国内の専門家を見渡すと,少なくともメディア上での発言を見る限りは 失望するしかないですね.

      • 西村典彦 より:

        アメリカも今になってインフルエンザ患者に新型コロナウィルス感染者が混ざっているのではないかと言い始めましたし、なぜ世界中?で後手に回ってしまうのでしょう。
        どっかの首相は「水際。。」「先手。。」と成功した試しがない重みのない言葉を発し、検査キットも足りないので精一杯やっているなどと抜け抜けと言っていますが、発注してくれたら増産しますよって言うメーカーはあるようです。桜に金使い過ぎて予算がないらしいです。知らんけど。

        • しらねのぞるば より:

          さきほどブログにあげた記事の通り,無症状者でも感染源となりうる,更に無症状者から感染された人がさらに他の人に感染能力があるとなれば,水際対策は意味をなしません. むしろ感染ルートばかりに注力するのではなく,広く網を打つように感染防止策をとる方が効率的と思います.

  2. apple より:

    appleと申します

    私は育児休業明け後の無理がたたって、気管支拡張症になり、現在は慢性下気道炎と言われています。服薬はしておりません。

    子供が大きくなってからは、自分自身に時間を割くことができるようになったため、
    体調に応じて無理せずコントロールしながら、気を付けて生活するということを続けています。感染症に罹患することが最もダメージが大きいのです。もし感染したら、助かる自信は
    ないです。

    ワクチンができるまでなんとか罹患せずに過ごせることを願うばかりです。

    ランセットの論文翻訳、ありがとうございました。

    • しらねのぞるば より:

      たしかに 重症化するかどうかは,持病の有無に左右されるでしょう. しかし,感染するかどうかは,ただいまブログに上げた記事の通り,高齢か/若いか,健康か/持病があるか などには関係なさそうです. したがって,感染確率を下げる注意さえ怠らなければ 何とかこの新コロナを乗り切れると思います.私も糖尿病ですので,たとえば外出時には手袋をして,絶対に素手ではつり革などに触らないようにして,帰宅後ただちに洗濯してしまいます.