2005年の糖尿病医療

この記事で;

2026年の糖尿病医療がどうなるかを予想してみましたが,神保町で購入した古本を 年末に整理していたら,こういう本が見つかりました.

野田光彦編 『糖尿病診療 実戦ロードマップ』南江堂


すっかり忘れていましたが,「このままでは糖尿病まっしぐら」と産業医に宣告された頃,神田をうろついて買い集めたものなのでしょう.

2007年に発行されたもので,現在では絶版になっています.
医療関係者向けに発行されていたmedical ASAHIという雑誌(2016年で休刊)に,2005-2006年に連載された記事をまとめたものです.当時の,つまり20年前の時点の 「最先端の糖尿病治療」がどんなものだったか,今読み返してみると よくわかります.

当時「糖尿病についてわかっていること」を簡明にまとめた図がありました.

『糖尿病診療 実戦ロードマップ』 p.2 (C)南江堂

図中にインクレチンがないことに注目. 当時 インクレチンの存在は知られていましたが,まだDPP-4阻害薬はなかったのです.

そして,もっとも驚いたのはこれです.

『糖尿病 実戦診療 実戦ロードマップ』 p.36 (C)南江堂

糖尿病の薬は,インスリンを除けば,SU(スルホニルウレア)剤,α-グルコシダーゼ,チアゾリジン,そしてビグアナイド(メトホルミン)しかなかったのです. しかしメトホルミンは,2012年に日本糖尿病学会が『メトホルミンの適正使用に関するRecommendation』を発表するまでは,まだまだ「乳酸アシドーシスを起こしやすい危険な薬」という印象が強く[★],この時点では ほとんど使われていませんでした.

したがって,当時の医師が 実際に糖尿病に使える手持ちカードは SU剤,α-グルコシダーゼ,チアゾリジンとこの3枚だけだったのです.この3薬でも手に負えなくなったらインスリンしかないという,非常に選択枝が限られた状態でした.

手持ちカードがあまりにも少ないので,必然的に薬物療法以外の治療手段,とりわけ食事療法を重視することになります. 『食品交換表は,糖尿病には理想の食事療法である』とされていたのは そういう時代背景があったからです.

当時の事情からしてこれは致し方ないでしょう.しかしながら,現在においても,頭の中が この20年前のままの医師がいます.『糖質制限食は食品交換表と正反対だから 絶対に認めない』と敵視するのは,このタイプでしょう.

[★]メトホルミンは乳酸アシドーシスを起こすから危険
ちなみに,現在でも そう信じて メトホルミンを絶対に処方しない医師は実際に存在します. 頭の中は20年前のままなのです. また,「あれこれ考えるのが面倒くさいから,糖尿病患者にはDPP-4阻害薬しか出さない」 という医師もいます. 「素人判断は禁物.とにかく『お医者様』のいう通りにしていればいい」という人は,そういう医師もいることを認識した方がいいと思います.

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