レタトルチド~体重への効果

レタトルチドとは,GIP,GLP-1,そしてグルカゴンの3種のホルモンを絶妙に『ものまね』して,これら3つの受容体を活性化する薬です.

あまりにもうまくまねているので,GIP,GLP-1,グルカゴンの受容体がすべて『すわ,うちのお客様がドドッと押しかけてきたぞ!』と騙されてしまうのです.

Coskun 2022

その結果,動物実験では,おそろしくなるほどの体重減少効果が確認されています.

Coskun 2022 Fig.2

10日間で体重が40%も減少したら,普通死んでしまいますよね. ただし,これは動物(マウス)での実験ですから,べらぼうな投与量を与えた場合です.人間相手にはこんな無茶なことはできません.

では,実際に人間の場合で,妥当・かつ安全な投与量なら どれくらい体重減少効果があるのでしょうか. それを調べた結果が報告されています.

Jastreboff 2023

BMIが30以上の人,または BMIが27-30で高血圧・高脂血症・心疾患リスクを1つ以上有する人,338人(内:男性 175人 女性 163人)を対象者に選び,レタトルチドを各種の投与量で48週まで継続して,体重の変化を調べています.

Jastreboff 2023 Fig1Aを訳

図中,ID.とは Initial Dose, つまり試験開始時点では少量投与から開始して,徐々に増量して最終的に所定投与量まで増やしたという意味です.
最終的な投与量が 8mgのケースで 48週後に-20%以上の減量で落ち着いていますから,おそらくPhase3試験では このあたりが投与上限量になるでしょう.

そしてこのグラフは,目標減量を達成した人の割合を示しています.

Jastreboff 2023 Fig1Bを訳

レタトルチド 8mg以上では,15%以上の減量を達成した人が70%以上です.5%の減量であれば,100%の人が達成しています.日本風に言えば「外れくじなし」ですね.

これほどの効果があると 副作用が恐ろしくなりますが,報告を見る限りでは 4mg投与群で死亡例が1件,投与中断に至った重篤な副作用のケースが27例(8%)発生しました.ただしこの死亡例は溺死であり,外部の調査委員会はレタトルチド投与と無関係と判定しています.
なお重篤な副作用 27例の内,12mg投与群が10例ですので,チルゼパチド(マンジャロ)などに比べてもそう多いわけではありません.重篤でないものも含めて もっとも多かった副作用は 吐き気(Nausea)でした.

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