この記事で20年前の日本の糖尿病医療がどんなものであったかを振り返りましたが;
この記事で取り上げた本には,もう一つ 興味深いことが書かれていました.

日本人の二人の男性,AさんとBさんの糖負荷試験 実測データです.

二人の結果は非常によく似ており,試験開始後90分で 血糖値は300近くに達しており,120分後でも200以上ですから,完全な糖尿病型です.図には書かれていませんが,二人ともGAD抗体は陰性なので,1型糖尿病ではありません. つまり,「2型糖尿病」という診断が下ります.ではこの二人は糖負荷試験結果がほぼ同じだから,2型糖尿病として同じ治療法でいいのでしょうか.
この本には,これ以上二人の詳しい説明は書かれていないのですが,著者の野田光彦先生が 2011年に厚労省の審議会でこういう資料を提出していました.

この資料中に,AさんとBさんのデータが このように示されています.

この審議会の議事録を見ると,野田先生は 『お二人とも165cm前後の方ですが、左の方は50kgを少し超えた程度、右は90kg台の人で』と述べており,Aさんは 日本人男性としては痩せすぎ(BMI=18.5未満)であり,家族に糖尿病の人(兄)がいます. 一方 Bさんは,BMI=34.7と 高度肥満すれすれの値で,家族に糖尿病の人はいません. つまり,実際に Aさん,Bさんに来ていただいて眺めると 全然違う見かけの二人なのです. 二人は糖負荷試験で 同じような血糖値推移でした.しかし試験中の血中インスリンはこうだったのです.

両図の青色ハッチング部は,日本人の糖負荷試験中の標準的なインスリン量です. ご覧の通り,Aさんは この基準範囲からは少なく逸脱しており,逆にBさんは 大きく超過しています. つまり この二人は,体格といい,家系といいい,インスリン分泌能といい,すべて正反対です. これほど違う二人を「同じ2型糖尿病なのだから」として,同じ治療法でいいのでしょうか?
もちろん このようなことは20年前でも知られていたのですから,現在の日本糖尿病学会も当然 十分に理解しています.
肥満型の糖尿病と,非肥満型の糖尿病とでは,適切な薬物治療は異なる
したがって,それぞれに最適の薬物療法アルゴリズム(手順)を適用すべきであるとして, 2022年 9月にこのように推奨しています.

まことに理にかなった勧告です.
しかしながら,そうであるならば,なぜ肥満と非肥満とで,それぞれに最適な食事療法を提案しないのでしょうか? たしかに「食事療法は個別化すべき」とは言っていますが,個別化云々以前に,肥満と非肥満では,そもそも正反対といっていいほど病態が異なるのですから,推奨される食事療法だって まったく異なるであろうと考える方が自然です.
あらためて,「糖尿病 食事療法のアルゴリズム」を提案します.



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