前回記事の『モンキー裁判』は,今からほぼ100年も前の出来事です. いくら何でも現在では『進化論は聖書の教えに反するから間違っている』などという人は もはや米国にはいないだろうと思うでしょう.しかし それは 宗教に淡白な日本人らしい勘違いです.
『神は今から約5000年前に万物を創造した』と信じる人,すなわち 進化論を信じない人は,昔話ではなく現在の米国でも多いのです.
2006年の Scienceにこういう報告が出されています.
1908~2000年代に 欧米各国+日本で,国民の進化論に対する意識をアンケートにより調査した多数の結果がまとめられています.
この調査の中で,2005年に1484人の米国人を対象にして,進化論に関する質問調査を行った結果が報告されています.
質問文の最後の【正】【誤】は,その質問が現代の科学では正しい 又は 誤りとされていることを示します.
種の絶滅や,恐竜と人類とは同時代ではない,と正しく答える人は多数派なのに(Q1,Q4),人類は神により創造されたと答える人は6割以上もおり(Q5),特に人類が原始的な生物から進化したのではないと思っている人が4割近くもいます(Q6).
もっとストレートに進化論を信じるかどうかという質問に対して,米国と他の国とでの回答を比較するとこうです.
ここに挙げた10ヶ国の内,9ヶ国では 進化論を『絶対に正しい』『おそらく正しい』と思う人が多数派なのに,米国だけは『進化論は(絶対に/おそらく)間違っている』と思う人が4割で,進化論を正しいと思う人よりも多かったのです.
これは2005年の結果ですが,最近ではどうかというと;
2017年のギャラップの調査では,神がすべてを創りだしたという創造論を信じる割合は38%に減ったことが報告されています.ただし,それでも まだ38%! 3人に1人は 『神による人類創造』を信じているのです.
[続く]
コメント
よく分からない(理解していない)ことを全て(よく分からない)神に押し付ける宗教観は個人的には好きではないですが、これは(少なくとも日本において)政府が言っているから正しいと思っている人が少なからずいる事と同列かなと思います。
その時点で思考停止だと思うと同時に、(宗教の場合は)分からないことに悩むことから精神的に解放されるメリットもあり得るとは思いますが、否定される事を極度に拒むのはどうかと思います。
Miller 2006論文では,学歴と進化論に対する否定的感情とは たしかに負の相関があるのですが,それは EU諸国よりも米国では相対的に弱いものでした. つまり米国では,高学歴でも 聖書の教えを信ずる人が相対的に多いということです.
実際に 米国出張で出会った,西海岸の大企業に勤務するバリバリの研究者は,最先端の科学技術のエキスパートでしたが,日曜には家族総出で教会に通っていました. つまり精神世界と現実世界とをうまく 分離・両立させていたのです.
>政府が言っているから正しい
宗教的信念と 反権力思想傾向とは あまり関連性はないと思います. 『神様を信じているから 政府にも忠実』というのは 何だか変ですからね.