【この記事は 第66回 日本糖尿病学会年次学術集会を聴講した しらねのぞるばの 手元メモを基にした感想です. 聞きまちがい/見まちがいによる不正確な点があるかもしれませんが,ご容赦願います】
これもイメグリミンに関する情報を期待して聴講したものです.
ランチョンセミナー 29
LS29-1 これからの 2 型糖尿病治療について考える~イメグリミンに期待すること
LS29-2 謎が深まるイメグリミン作用
ランチョンセミナーの会場に入ってビックリ! ものすごい人数です.道理で 当日朝に配布される このランチョンセミナーの整理券が あっという間に満員御礼になったわけです.2番目の講演:LS-29-2は, メトホルミンの腸管作用を解明した 神戸大学の小川 渉先生が講師ということで,やはり参加者の関心が高かったようです.
神戸大学 小川渉先生の講演は;
- メトホルミンとイメグリミンは非常によく似た化学構造を持つ.
- にもかかわらず,イメグリミンが血糖値上昇に応じてインスリン分泌を促進するという特性はメトホルミンには見られない.
- この『謎のイメグリミンの作用』はどういうメカニズムなのか.
という話でした.
イメグリミンの血糖値に応じたインスリン分泌促進作用については,Poxel社によれば NAD+生成増強説が提唱されているのですが,本当にそうなのか,あるいはそれだけなのだろうか,という問題提起です.
小川先生の説は,最近発表されたこの文献をほぼなぞるものでした.
動物実験ですが,まずイメグリミンとDPP-4阻害薬(シタグリプチン=商品名:ジャヌビア、グラクティブ)とをそれぞれ単独に投与した場合,及び 両者を同時に投与した場合とで,糖負荷試験での血糖値とインスリン分泌,及び GIP,GLP-1の変化を測定しています.
糖負荷試験中の血糖値の上昇は,イメグリミン 又は シタグリプチン それぞれ単独の場合よりも,両方を投与した場合に大きく低下しました.
これはイメグリミンとシタグリプチンの両方を投与した場合には,それぞれ単独投与よりもインスリン分泌が大きく増加したことによるものです.
ところが,GIPの分泌量はどの場合でも有意差はありませんでした.
しかし,活性型GLP-1の変化を見ると,これはイメグリミンとシタグリプチンの両方を投与した場合にのみ大きく増加していました.
つまり イメグリミンとDPP-4阻害薬との間には 相乗作用が働いていることになります. このことから,イメグリミンはインクレチンにかかわる何らかの『謎の』作用特性を有している,という話でした.
たしかにイメグリミンの多剤との併用試験(TIMES 2試験)において,DPP-4阻害剤との併用は,もっとも大きなHbA1c低下をもたらしました.
一方で,上図の通り,DPP-4阻害薬と同じくインクレチン関連薬である GLP-1受容体作動薬(GLP-1RA)と併用した場合は,イメグリミンの追加効果はほぼみられないという正反対の結果でした. これはGLP-1RAによって,GLP-1受容体は既に極限まで活性化されているので(薬理作用的上限),そこにイメグリミンが追加作用を発揮する余地がなかったと解釈しています.
イメグリミンは,糖新生・インスリン抵抗性の抑制,インスリン分泌・インクレチンの促進,ミトコンドリアの呼吸作用改善等々,あらゆるところで『何らかの作用』を及ぼしているようで,もうわけがわかりません.
なお,この講演にひそかに期待していた『イメグリミンは腸でも働いている塗り薬だ』という話は出ませんでした. 残念.
[続く]
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