第66回日本糖尿病学会の感想[8] リブレ3が登場?

【この記事は 第66回 日本糖尿病学会年次学術集会を聴講した しらねのぞるばの 手元メモを基にした感想です. 聞きまちがい/見まちがいによる不正確な点があるかもしれませんが,ご容赦願います】

これだけリブレが普及すると,もちろんリブレを活用してこそわかることも多いので,そのメリットについてはもはや誰も否定できません. 反面よく使われるようになったリブレだからこそ,その欠点や不満もまた見えてきます. これに関する報告を聞いてみました.

2-99-3 1型糖尿病患者におけるFreeStyleリブレ(第3世代アルゴリズム)の計測特性分析

タイトルを見て,『すわ,欧州で発売されるリブレ3の使用体験か?』と色めき立ったのですが,これは私の早とちりでリブレ【後述】のことではありませんでした. 現在のリブレで,ただ組み込まれているソフトをUpgradeしたもののことでした.

私はリブレを使っていないので,あまりフォローしてこなかったのですが,リブレは初期に発売されたものから,内臓ソフトのアルゴリズムをバージョンアップしてきたようです.今回は その第3世代ソフトのアルゴリズムが初期版とどう違うのかを検証したものです.

報告者の国立病院機構京都医療センター村田敬先生は,リブレの測定精度検証のため,2022年から1型糖尿病の人に,下記のプロジェクトへの参加を呼び掛けていました.

FreeStyleリブレ第3世代アルゴリズムの精度評価[PDF]

この口演は,このプロジェクトに基づいてデータの収集及び解析が完了したので,中間報告を行ったものです.

方法

11名の1型糖尿病の人の両腕に,一方の腕には第1世代ソフトのリブレ,他方の腕には第3世代ソフトのリブレを装着してもらい,両者の測定結果を比較しました.

結果

SMBGでの測定値を真値とした相関係数では,第1世代は r=0.958, 第3世代は r=0.938であり,特に第3世代で精度が向上したというわけではなかった.
ただし,第1世代は,『比例誤差』(=血糖値が高くなるほど誤差が大きくなる)が激しかったが,第3世代ではそれが改善されていた.

なお,エラーグリッド(下図)では,どちらもすべてのデータがA+Bゾーンに収まっており,治療への影響と言う面ではまったく差がなかった.

以上がこの口演の概要ですが,私が当初早とちりしたリブレとは,リブレ2を更に大きく改良した全くの新製品のことです.

リブレ3

FS2 vs FS3

右が欧米の従来製品 リブレ2で,左が新製品のリブレ3です.なお,わざわざ『欧米の』と断ったのは,日本では リブレ2すら発売されておらず,現在日本に存在するものは 初代のリブレ1のみだからです.

リブレ3は,それまでのリブレの欠点を大幅に改善しています.
まず,ご覧の通り センサーが非常に小さくなりました. ほぼ1円玉2枚分の直径と厚みです.

そして,

スキャンが不要になりました

これは大きいでしょう. もはや読取リーダーは不要で,最初から測定数値はスマホに自動転送されます. しかも1分ごとに自動的に転送されるのです.これでたとえ寝ていても測定値はスマホに取り込まれます.

早くこのリブレ3が日本でも発売されてほしいですね.
なお,測定精度については,発売元のAbottは『世界のCGM中,最高の精度である』と主張しています.もっともこれは従来からそうでしたが.

[続く]

コメント

  1. 西村 典彦 より:

    >内臓ソフトのアルゴリズムをバージョンアップ

    センサーにもアルゴリズムが内蔵されているのでしょうか?
    私の認識ではセンサーから受信した生データをリーダーもしくはスマホアプリ側で補正しているという認識です。したがってバージョンの低いリーダーと最新のスマホアプリでは同じセンサーから受信しても違う値になります。最新のリーダーではスマホアプリと同じ値になるようです。

    私が5年以上使用した実績では、精度については、5個に1個の割合でメーカーに返品交換をお願いしていましたが、一度も断られた事はないです。メーカーも精度が使用に耐えないと認めているのだと思います。ほとんどの場合、SMBGに対して低くでます。
    スマホアプリにしてからは返品率はかなり下がりました。およそですが半分程度、10個に1個くらいの感覚です。アプリのアルゴリズムの違いだと思います。

    いずれにしても日本でも最新のリブレを早く使えるようになって欲しいものです。認可されない理由がわかりません。
    以前は医療機器は専用機でないとダメでスマホのような汎用機では認可されなかったのですが、そのためアップルウォッチの心電図機能なども許可されませんでしたが、現時点ではその壁障壁は無くなっていると思うのですが、まだ何か問題点があるのでしょうか。

    • しらねのぞるば より:

      >センサーにもアルゴリズムが内蔵

      読み取り機だけではなくて,センサー部にも何らかのコンピュータは内臓されていると思います.電極(針)からの信号を増幅してBluetoothで送信する機能が必要だからです. ただそのプログラムのアルゴリズムはUpgradeできるようにはなっていないでしょうね.不可能ではないですが.

      >最新のリーダーではスマホアプリと同じ値になる
      一時期,専用読み取り機とスマホとで,全然違う値になると騒がれていましたが,これこそアルゴリズムの違いが原因でしょう.スマホのアプリは逐次Updateできますが,読み取り機の方は 出荷時のままですからね. 現在出荷されているものは,この第3世代アルゴリズムになっていると思います.

      >認可されない理由
      CGMが海外で普及しているのに,日本では『鎖国』が長く続きました. 日本でも欧米でも,医療機器・医薬品の承認審査が厳格なのは同じです.命に係わることですからそれは当然です.しかし 問題は欧米と日本で,あまりにも承認審査にかかる時間が違い過ぎることです. 最近はそれでも昔に比べれば,短くなったようですが.
      コロナの治療薬・ワクチンで緊急承認が乱発されましたが,あれを見ると いつまでも海外の製品を承認せずにダラダラと『審査』を続けているのは何のためなのかと思います.

      海外,特に米国と日本とで違うのは 規制に関する根本的な哲学だと思います. 日本は条文主義です. 米国はPragmatismが根底にあるので,本質主義(Substantialism)です.形式がどうであれ 実質的にどうなのか,を判断するのが欧米合理主義ですからね.

      尿糖試験紙は通信販売できないのに,リブレのセンサーはネットで買える. これは米国人には理解不能でしょう.
      しかし,日本の役人の発想では,『尿糖検査は医師が判断すべき医療行為である』『リブレの【間質液糖濃度】は,既存の法律に該当項目がないので医療機器ではない』となるのです.