HOMA-β 日本人には 要注意
このシリーズでは,インスリン抵抗性と並んで HOMAの もう一つの側面=HOMA-β(インスリン分泌能)については 故意にふれてきませんでした. なぜならHOMA-βは日本人に適用する際には 特に注意が必要だからです.
HOMAの基礎となっているクランプ試験の基礎データは欧米の正常者/糖尿病患者でとられたものです.
つまり,あのダンプカーのような体格の欧米人と,軽トラのような日本人とでは,そもそも基礎インスリンの量からして違いすぎます.したがって,HOMA-β=100%が 膵臓β機能正常という線は 欧米人の基準です.
よって,HOMA-βに日本人のデータを当てはめて,それが 膵臓β機能=20%だったとしても,『既に膵臓機能が8割も低下している』とはなりません. もしもそうなら,日本人は全員インスリン分泌不全です.
実際,『日本人にはHOMA-βはあてはまらない』とまで断言する先生もおられます.
こういった理由で,日本では HOMA-βが40以上を正常,80以上を過剰分泌としています.
実際 健常な日本人 1,098人(男性:538 女性:560)のHOMA-βを調べてみると
HOMA-βが100を越える人なんてほとんどいません. いちばん 多かったのは HOMA-βが50~60の人で,その次に多かったのは 40~50 でした. したがって健康な人でも,日本人の半分以上は60未満なのです.
本来なら,それこそ糖尿病学会が多数の日本人のデータを集積して,HOMA-Jでも作るべきなのでしょうが,残念ながら現在の日本では,Mathhews博士の業績 に比肩するほどの高品質データベースが存在しないのです.
[9]に続く
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