【続】[2型糖尿病]は存在しない[11完] 違う病気を同じ名前で呼ぶ弊害

前回記事では

BMIが31以上という高度肥満の人が,2週間の肥満治療(=超低カロリー食+運動療法)で,体重が 3%減っただけなのに,糖負荷試験で『糖尿病型』から『境界型』に改善しました.しかも血糖値が下がったにもかかわらず,インスリン分泌量は半分以下になったのです. 『単純肥満型糖尿病』 (Ahlqvist分類では MOD;軽度肥満性糖尿病)/は,肥満度合を下げれば,直ちに 糖尿病が目に見えて改善されるという一例でした.

違う病気に 一つの病名・一つの治療法

しかし,『2型糖尿病は一つの病気である』という考えから,そして上記の症例を引用して『だから,すべての2型糖尿病は カロリー制限食で治せる』と総括してしまうと 問題が生じます.

  • 2型糖尿病が カロリー制限食による減量で治った
  • 単純肥満型糖尿病が カロリー制限食による減量で治った

この二つは 全然違います. 前者は,『すべての2型糖尿病はこの方法で治せるはずだ』となるのに対し,後者は 単純肥満型糖尿病以外の 重度インスリン分泌不全糖尿病(SIDD),重度インスリン抵抗性糖尿病(SIRD),単純加齢性糖尿病(MARD)でも 同じように成功するかどうかはわからないからです.

単純肥満型糖尿病だけが『2型糖尿病』ではない

断食,カロリー制限食,プラントベース食,あるいは筋トレやランニングなどで,『糖尿病が治った』『糖尿病を治した』という経験談を見ると,それぞれ自分に適した肥満脱却法を見つけて実践したら成功したという例がほとんどです. つまり,ほとんどが単純肥満型糖尿病であったと思います.2型糖尿病と呼ばれているものには,実は相互に全然違う病気が含まれているのに,それを『2型糖尿病が治った/治した』ととらえてしまうと,単純肥満型糖尿病以外の人には,かえって由々しい結果を生んでしまいます.

日本に『腎症リスクの高いSIRDがどれくらい存在しているのか,研究が進んでいないので,その実数は不明です.しかし,SIRDの人が単純肥満型糖尿病と同じであるとみなされて『簡単に治るだろう』として単なる「肥満解消プログラム」だけの治療をされたら悲劇を生むでしょう.

また単純加齢性糖尿病(MARD)の患者に 無理やり減量と運動を強要して『良好な血糖コントロール』を求めたら,治るどころか,低血糖などQOLの低下をまねき かえって寿命を縮めるでしょう.

日本糖尿病学会は分裂しましょう

それも,これも全く違う病気を,乱暴にも一つの病名で呼んでしまっていることが誤解の根源なのです.

この際日本糖尿病学会は 『日本単純肥満性糖尿病学会』『日本インスリン分泌不全糖尿病学会』『日本加齢性糖尿病学会』『日本 SIRD糖尿病学会』の4つに分かれるべきです.実際 そうした方が それぞれ 診断法も治療法もまるで違うので 医師にも患者にもわかりやすいでしょう.

それが非現実的というなら,せめて 最低限 この4つは別物であると診断基準に明記することが急がれると思います.

【続】[2型糖尿病]は存在しない[完]

コメント

  1. よっしー より:

    いつも素晴らしい記事をありがとうございます。本当にその通りですね。
    2型糖尿病といってもいろいろなタイプがあるのに「自分はこの方法で良くなったので、良くならない人は努力が足りない」などと決めつけるのはどうなのかと前から思っていました。

    またSNSで知り合った糖尿病専門医の先生複数に話を聞きましたが、教育入院するだけですぐ血糖値が下がる患者さんもいるけどそうではない患者さんもいらっしゃるとのことでした。当然ですよね。

    • しらねのぞるば より:

      記事中でも 何度か述べましたように,SIRDは 初期の外見上は 軽度の肥満糖尿病とみなされやすいことに危機感を覚えています.
      Ahlqvist説が正しければ,SIRDはむしろ膵臓は健全なのですから,早期に最適の治療を受ければ 速やかに寛解するでしょう. しかし 従来の考えにとらわれて放置すれば 重度腎症・透析に至ります. その差は天国と地獄です. ただ欧米の糖尿病学会は,これといった意見表明をまだ行っていません.とすると日本糖尿病学会は なおさらでしょうね.